院長
マズローの欲求5段階と、その歪みについて
マズローの欲求5段階説というものがあります。人間の欲求はピラミッド状に構成され、下位の欲求が満たされると、より高次の欲求へ移行するという理論です。米国の心理学者マズローが提唱したもので、「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5つから成ります。まず、生理的欲求とは食事や睡眠など、生きるために不可欠なもの。安全欲求は、身の危険や不安から離れ、安心して暮らしたいという欲求…
生(性)と死──向き合うべき大きな課題
先日、SNS上で「日本の終末期医療は医療費の無駄遣いだ」という論調が話題になっていました。これに対し、一部の医療者からは「患者家族が延命治療の中止を受け入れないからだ」という意見も見られました。私は大学を離れて久しく、がん治療などの終末期医療に直接関わる機会は最近ありません。しかし、あくまで私見として言えば、家族が“死”を受け入れることは本来とても難しいのだと思います。日ごろから死について考えるこ…
卵子凍結モデル事業が国の議論へ──浦安から始まった挑戦が、いま新たなステージへ
はじめに先日、国民民主党の岡野純子議員が、国会でこども家庭庁が予定している「卵子凍結モデル事業」について質問されました。岡野議員は政治家としてのスタートを浦安市議会議員から切られた方であり、その頃に私が浦安市で行った卵子凍結プロジェクトにもご協力いただきました。今回の質疑は、その延長線上にあるものだと感じています。10年越しに、当時は前例のなかった取り組みが、国の政策として議論される段階にまで進ん…
日本の出生数が過去最低を更新──だからこそ、生殖の“現実”を正しく知る必要があります。
2025年、日本の出生数は 705,809人 と発表され、10年連続で過去最低を更新しました。この減少スピードは政府の想定を上回っており、日本社会はこれまで経験したことのない人口構造の変化に直面しています。出生数の減少は、単に「子どもが減っている」という話ではありません。結婚・妊娠・出産のタイミングが後ろ倒しになり、結果として 妊娠が成立しにくい年齢で初めて妊娠を考える人が増えている という、深刻…
命の値段について考える
少し刺激的なタイトルかもしれません。しかし先日、過去最高額となる治療薬が保険収載されたというニュースを目にし、医療に携わる者として、そして一人の市民として、改めて「治療費」と「命の価値」について考えさせられました。今日はその思いを綴ってみたいと思います。 デュシェンヌ型筋ジストロフィーという病デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、先天的に発症する進行性の難病です。多くは小児期に症状が現れ、や…
お医者さんってすごい!
ついに私も、なってしまいました。ここ数か月、鼻閉がひどく、かなり苦しい状態が続いていました。そうです、花粉症です。大学時代、当時の教授が突然花粉症を発症し、「大変だ」と嘆いていた姿を思い出します。歳を重ねてから急に発症することも多いようで、その教授から「お前もいつかこうなるぞ!」と言われていましたが、あれから10年ほど経ち、ついに私も仲間入りしてしまいました。「医者の不養生」とはよく言ったもので、…
