院長
~特別編~ 第22章(あとがき)──静かに選んだ道の先でNEW
振り返れば、私の医師としての歩みは、決して計画されたものではありませんでした。落ちこぼれとして産婦人科に拾っていただき、その後も、偶然の連続のような日々でした。ただ、その偶然を偶然のままにせず、「何か先につながるものはないか」と考え続けてきたことが、結果として今の自分を形づくってきたのだと思います。 若い頃、私は教授になることを自然な目標だと感じていました。その背景には、志半ばで倒れた師匠の存在が…
余白が人生を豊かにするということ──エスカレーターの記憶から考える、体験と幸福の本質NEW
子どもの頃、田舎に住んでいた私は、近くのスーパーにエスカレーターができたと聞き、わざわざそれを見に行ったことがあります。初めて乗ったあの瞬間の嬉しさは、今でも鮮明に覚えています。都会の人からすれば取るに足らない出来事かもしれません。しかし、あの時の私は、世界がひとつ広がったような気がして胸が高鳴ったのです。今では「エスカレーターで遊ばないように」というアナウンスが流れますが、子どもにとってはあれほ…
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~特別編~ 第21章:おまけの章──The Prime of LifeNEW
さて、小説家になってしまった私の後輩が、産婦人科を舞台にした小説を書いています。以前にも触れましたが、その中には、私をモデルにした「海崎先生」が登場します。ひたすらに突っ走っていた頃の私──今では懐かしくもあり、少し恥ずかしくもあります。しかし、小説の中の海崎先生は、あの頃の私そのままに、生き生きと、そして眩しいほどの熱量を持って存在しています。 私が好きな曲のひとつに、松岡直也さんの The P…
~特別編~ 第20章(最終章):エピローグ──幸せになるという約束
私の人生は、気がつけばもう後半を過ぎ、静かにエピローグへと向かっています。振り返れば、私は決してひとりでここまで来たわけではありません。むしろ、数え切れないほど多くの方々に支えられ、導かれ、背中を押されてきました。 落ちこぼれとして始まった私のキャリアは、師匠や恩師、先輩、後輩、そして家族──そのすべての存在によって形作られてきたものです。とりわけ、もう言葉を交わすことが叶わない方々。感謝を伝える…
「かわいい偏重社会」と少子化──日本の恋愛市場が抱える構造的ゆがみと、妊孕性の現実について
日本の少子化は、長らく経済や保育制度の問題として語られてきました。しかし、これらの対策がほとんど効果を上げていないことは、すでに誰もが知るところです。では、少子化の本質はどこにあるのでしょうか。生殖医療の現場で妊孕性の現実と向き合い続ける中で、私は、日本社会の恋愛市場そのものに構造的なゆがみがあるのではないかと感じるようになりました。そのゆがみを生み出しているのが、日本特有の「かわいい偏重文化」で…
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~特別編~ 第19章:メディカルパークへ──そして後輩からの助言
下関で生殖医学会がありました。私は浦安プロジェクトについて発表し、降壇したとき、他の先生方からの質問に紛れて、医師ではない方がひとり近づいてきました。名刺を差し出し、「お話があります」と。リクルートの方でした。多くのオファーをいただいていた中で、わざわざ現地まで来られた方はいませんでした。その時点では具体的な法人名は明かされませんでしたが、その熱意に打たれ、私はメディカルパークへの移籍を決めました…
~特別編~ 第18章:その先の未来へ──働き方改革の提案
がむしゃらに働いていた私ですが、それなりに評価してくださる方々は多かったようです。実際、私のもとにはさまざまなオファーが届いていました。大学の教授選、他院の院長職──いわば“売り時”だったのかもしれません。 理事長からのご指示で、教授に昇格させて大学に残す案もあったと聞きました。学部長からその話を直接伺いましたが、私の気持ちは揺らぎませんでした。というのも、大学に残る限り、この恐ろしく多忙な生活は…
ブログページの改定について
当院の院長ブログでは、月曜と金曜に「特別編」として回顧録を掲載し、毎週水曜には、私自身の思いや考えを綴ったエッセイを更新しています。 さて、この月曜・金曜の特別編は続き物であり、本来であれば「まとめて読み進めたい」という方がより見やすい構造になっている方が望ましいと考えておりました。そのような中、当院の優秀な事務長がホームページを改修し、“特別編”というタグを押すだけで、回顧録だけを抽出して表示で…
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~特別編~ 第17章:市長選と県知事選──政治の冷徹さ
私は政治家ではありませんので、選挙についての詳細はここでは触れません。ただ、結果として、県知事選に出馬した松崎元市長は敗れ、市長選では松崎氏の対立候補が当選しました。松崎氏が擁立した候補は、卵子凍結を応援してくださった元市議会議員であり、申し訳ない気持ちもありましたが、私にはどうすることもできませんでした。選挙において、新たな市長が誕生するということは、これまでとは異なる政治姿勢を示すことが多いも…
~特別編~第16章:日常と非日常──プロジェクト継続の葛藤
そんな出来事があったにもかかわらず、前述のように理事長から当直を外す指示が出ていたとはいえ、人手が足りていない大学病院では、やはり当直業務をこなさなければなりませんでした。私も例外ではありません。特に周産期センターである順天堂浦安病院では、毎日のように産科救急への対応が必要でした。私は、心房細動のあとも、それまでと変わらず日常業務を続けなければなりませんでした。ただ、循環器内科の先生方には非常に手…
