中国を“発展途上”と信じ続ける日本の危うさ
中国を訪れたとき、私は1980年代のアメリカで感じた空気とまったく同じものを感じました。留学時代、アメリカ人は日本人を敗戦国の黄色人種として扱いながら、同時にソニー製品をアメリカ製だと信じるほど、日本の技術力を正しく認識できていませんでした。表層では日本を下に見ながら、実際には日本の技術が脅威になっていた。その“認知の遅れ”こそが、当時のアメリカの最大の弱点でした。
そして今、その構造が日本にそっくり反転しています。日本の政治家や60代前後の層は、中国をいまだに「発展途上国」と捉え、中国製品は粗悪だと信じています。しかし現実には、中国はAI、EV、電池、通信、製造業、軍事、サイバー攻撃など、あらゆる領域で世界の中心に近づいています。GDP(購買力平価)は世界1位、AI論文数も世界トップクラス。もはや「発展途上国」という認識は完全に時代遅れです。
私が中国で最も衝撃を受けたのは、若者の圧倒的なエネルギーでした。中国共産党に入りたいと渇望し、国家プロジェクトに参加することを誇りとし、AIや軍事、サイバー領域に優秀な人材が殺到している。国家と個人の成功が完全にリンクしているため、若者の努力がそのまま国家の力に変換されていく。これは日本ではすでに失われた構造です。
一方、日本では働き方改革が進み、若者は「無理をしない働き方」を求めるようになりました。努力しても報われない、給料は上がらない、国家の成長と自分の人生が結びつかない。国家プロジェクトも存在せず、若者が国家戦略に関わる機会もほとんどありません。中国の若者が国家のために全力を尽くす一方、日本の若者は国家と人生が切り離された社会に生きています。
この“国家エネルギーの差”は、AIや軍事、サイバー攻撃の領域で決定的な差となって表れます。中国は倫理的ブレーキをかけず、AIを統治・軍事・監視・外交に統合して運用しています。サイバー攻撃はAIで自動化され、攻撃の量と速度は桁違いです。日本の金融や軍事インフラが、いとも簡単に突破される可能性は現実的に高いにもかかわらず、日本の意思決定層はその脅威を正しく認識できていません。
最大の脅威は、中国の力そのものではなく、日本がその現実を認知できていないことです。80年代のアメリカが日本の台頭を理解できなかったように、今の日本は中国の台頭を理解できていません。歴史は反転し、かつてアメリカが抱えていた“認知の遅れ”を、今度は日本が抱えているのです。


