~特別編~第14章:台風の目──技術開発と嫉妬の渦
その後、私はさらに注目を集めることになり、マスコミの取材や講演会への招待、学会発表など、再び忙しい日々が始まりました。卵子凍結のプロジェクトだけでなく、腹腔鏡下手術の機器開発も並行して進めていたため、多くの企業からアプローチを受けるようになりました。その中から、いくつかをご紹介したいと思います。
■ in-bag morcellation
腹腔鏡では、検体を細い創から回収するために組織を砕く必要があります。これをモルセレーションと呼びますが、そのまま砕くと腹腔内に組織片が飛散し、再発などのリスクにつながります。
そこで、大きな袋の中で砕く「in-bag morcellation」を普及させるため、学会と協力して取り組みました。
■ barbed suture
“返し”の付いた糸を使用することで、縫合時の結紮(糸結び)が不要になります。
この針糸を用いた術式を開発し、学会や論文で発表、普及に尽力しました。現在ではさまざまな領域で使用されるようになっています。
■ 光る尿管ステント
婦人科手術では尿管損傷は重大な合併症です。
特に子宮全摘術では、尿管が子宮のすぐそばを走行するため、癒着や変位があると損傷リスクが高まります。
そこで、腹腔鏡下でも尿管を明瞭に認識できるよう、発光する尿管ステントの開発に協力しました。
■ 癒着防止剤
手術後の癒着を防ぐため、組織に貼付するタイプの癒着防止剤の開発にも携わりました。
剥がれにくく、破れにくく、貼り直しも可能な製品で、現在は TENALEAF(グンゼ株式会社) として発売されています。
これらはほんの一部ですが、私のように手の小さい外科医でも使用できるユニバーサルデザインの器具開発や、電気メスなどの開発も含め、私はとても楽しく仕事をさせていただいていました。
しかし──
出る杭は打たれる。
私のことを良く思わない先生方もいたようで、さまざまな“邪魔”をされることもありました。
「好きなことをしたい。そのうえで大学を辞めたい」
そんな思いが強くなっていた私は、やや突っ走り気味だったのかもしれません。
その結果、
大学の外での私の評価と、大学内での評価がどんどん乖離していく
という状況が生まれてしまいました。
今振り返れば、大学の通常業務をおろそかにしてしまった面もあったと思います。
その分、当直などでバランスを取っているつもりでしたが──
後になって知ったのですが、
理事長からは「私を当直から外すように」という指示が出ていたそうです。
自由にさせて結果的に貢献する、それはそれで良いのかもしれません。
しかし、私が当直に入らなければ、誰かがその分を負担することになる。
そのジレンマに、私は徐々に追い詰められていきました。
そして、ある日──。


