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特別編 院長

~特別編~ 第17章:市長選と県知事選──政治の冷徹さ

私は政治家ではありませんので、選挙についての詳細はここでは触れません。ただ、結果として、県知事選に出馬した松崎元市長は敗れ、市長選では松崎氏の対立候補が当選しました。
松崎氏が擁立した候補は、卵子凍結を応援してくださった元市議会議員であり、申し訳ない気持ちもありましたが、私にはどうすることもできませんでした。
選挙において、新たな市長が誕生するということは、これまでとは異なる政治姿勢を示すことが多いものです。特に、擁立した候補同士が対立していた以上、松崎元市長が進めてきた政策を否定する方向に舵を切るのは、ある意味当然だったのだと思います。
そこに悪意があったわけではないのでしょう。
しかし、政治とはある意味で冷徹なものです。
新市長はわざわざ順天堂浦安病院を訪問してくださり、卵子凍結プロジェクトの今後について話してくださいました。
その際、
「継続はしない」 
という方針が示されました。
さらに、市には批判的な意見も多く届いており、それらの声も尊重しなければならない、とも仰いました。
私たちはそれまで、松崎元市長陣営からの話を多く聞いていたため、反対意見についてはあまり耳に入っていませんでした。
確かに、病院にも当初は“凸電”がありましたが、次第に落ち着いていたため、新市長の言葉には少し驚きました。
しかし同時に、
「これが本質なのかもしれない」 
とも感じたのです。
冒頭にも述べた通り、私は政治家ではありません。
しかし、政治家の方々は、賛否両論の声が届く中で、落としどころを探り、時には反対勢力を説得しながら進めていく──
その大変さを痛感しました。

さて、これで私がすべきことは明確になりました。
リプロダクションセンターを後任に引き継ぎ、フォローアップは継続するものの、卵子凍結プロジェクトはいったん終了させる。
そして、それが済めば、大学を辞めることができる。
そう考えると、心がとても晴れやかになったのです。
実際のところ、それまで後輩を教育してきたことが、このような場面で大いに役立ちました。
主任教授に相談し、後任を派遣していただくこと。
病院長に話し、センター長を他の先生に譲ること。
私の予定手術は期限をもって終了すること。
これらをお願いしました。
しかし、この行動がまた波紋を呼びました。
私は理事長からある程度期待されていたようで、主任教授が私を引き留めなかったことが問題視されてしまったのです。
これは教授にもご迷惑をかけることになり、今でも反省しています。
ただ、その時点で私の気持ちは変わらず、最終的には理事長にもご理解いただくことができました。