~特別編~第11章:熱い市長──政策と情熱の邂逅

浦安市は、巨大テーマパークを抱え、都内で働く人々のベッドタウンとして発展してきました。特に“新町”と呼ばれる埋め立て地の新浦安エリアは、ヤシの木が立ち並び、高級マンションが林立する高級住宅街です。そのため高額納税者も多く、浦安市の財政は非常に健全でした。

3.11の際には液状化など甚大な被害が出ましたが、潤沢な財政のおかげで特別交付税を受けることなく、市内の財源のみで復興できたと伺いました。

担当者からそのような話を聞いていると、少し遅れて松崎市長が登場されました。

市長は大きなメモ紙を手にしており、そこにはびっしりと書き込まれたメモがありました。市内在住の若い女性たちとの対談を何度も重ね、さまざまな意見を直接聞いてきたのだそうです。

二人目不妊、年齢による妊孕性低下、産後の大変さ、不十分な託児所──

市長は、そこで得た“生の声”をもとに、潤沢な財政を背景に次々と政策を実行していました。

いくつか例を挙げると、

  • 北欧の“ネウボラ”を参考にした産後ケアシステム 

市内に多数あるホテル、とくにテーマパークのホテルは日中空室が多く、その時間帯を利用して産後のお母さんが休める仕組みを整備。

  • 理由を問わない託児所 

子どもを預ける際に理由を求められることが“後ろめたさ”につながるなら、理由は問わず、いつでも預けられる託児所を市内に整備。

こうした政策は非常に評判が高く、浦安市は“子育てしやすい市”として表彰されたこともありました。

そして、不妊治療センターの研究テーマの話になり、私は準備していた資料をもとに、

  • 妊孕性とは何か
  • それを低下させる要因(がん治療、子宮内膜症、加齢など)
  • 卵子・卵巣の凍結保存の可能性

について説明しました。

当時私は、卵巣組織凍結を起点にがん生殖医療を進めており、まだ黎明期だったがん生殖医療を研究テーマとして提案しました。

市長は非常に興味を持ってくださり、熱心に耳を傾けてくれました。

卵子や卵巣が凍結保存でき、何年も保管できる──

その事実だけでも大きな衝撃だったようです。

しかし、市長にはひとつだけ疑問がありました。

それは、市税を投入するプロジェクトであるからこそ、責任者として当然抱く“素朴で本質的な疑問”でした。