未来を決めつけるな
若い頃というのは、「こうでなければならない」という思いが強いものです。
良い大学に入り、良い職業に就き、計画通りに人生を進める。
そのような明確な目標を持つこと自体は決して悪いことではありません。
しかし振り返ってみると、私自身の人生は計画通りになったことの方が少なかったように思います。
若い頃は、自分が思い描く未来が正しい未来であり、それ以外は失敗だと考えがちです。
ところが実際には、人生は予想もしなかった出来事の連続です。思い通りにならなかったことがきっかけで、新しい世界が開けることもあります。
出会うはずのなかった人とのご縁が生まれることもあります。
そしてその結果、当初は想像もしなかった場所にたどり着くことがあります。
私が以前講演で用いた言葉に、「進路を決めるのは風ではない、帆の向きである」というものがあります。
人生には自分では変えられない風が吹きます。
景気も、社会情勢も、人との出会いも、自分の努力だけではどうにもならないことが少なくありません。
しかし、その風を受けてどちらへ向かうかは、自分自身で決めることができます。
若い頃は感情も非常に大きく揺れ動きます。不安になれば未来が暗く見えます。
失敗すれば人生が終わったように感じます。
人と比較すれば焦りを感じます。
しかし今になって思うのは、その時の感情は本物であっても、必ずしも未来の真実ではなかったということです。
人間の感情は思っている以上に不安定です。
体調や睡眠、疲労、さらにはホルモンの変化によっても大きく左右されます。
特に若い頃は心も身体も変化の途中にあり、自分自身の感情に強く振り回されやすい時期です。
だからこそ、今感じている不安や焦りだけで未来を決めつけないでほしいのです。
もちろん感情は人間にとって大切なものです。
感動も、恋愛も、友情も、希望も、すべて感情があるからこそ生まれます。
感情を否定する必要はありません。
しかし感情に支配される必要もありません。
今日はそう感じているのだな、と少し離れたところから眺めることができれば、それだけで人生はずいぶん楽になります。
生前、父はよく「人生、寄り道もあっていい。その分経験が増えるから。
遠回りしたなら、その分長生きすればいい」と言っていました。
若い頃には冗談のように聞こえましたが、年齢を重ねるほど、その意味がわかるようになりました。
人生は最短距離だけが価値ではありません。
むしろ寄り道の中でしか見えない景色や出会えない人がいます。
私自身、若い頃にはまったく想像していなかった現在を生きています。
当時描いていた未来予想図はほとんど当たっていません。
しかし振り返れば、想定外だったからこそ面白かったのです。
もしすべてが計画通りであったなら、今の私は存在しなかったでしょう。
だから皆さんに伝えたいことがあります。
未来を決めつけないでください。
今の感情だけで、自分の人生の可能性を閉ざさないでください。
思い通りにならないことがあっても構いません。
人生とは、本来そういうものです。
大切なのは、未来を完全に予測することではありません。
どのような風が吹いても帆を調整しながら進み続けることです。
そして振り返った時に、「思っていた人生ではなかったけれど、なかなか面白い人生だった」と笑えれば、それで十分なのではないでしょうか。


