~特別編~ 師匠の教え、順天堂産婦人科式腹腔鏡下手術
今回は、師匠の悲願であった教科書のお話です。
武内先生が入院中に執筆された、順天堂産婦人科内視鏡チームの集大成ともいえる教科書──『順天堂大学産婦人科内視鏡チームによる腹腔鏡手術マニュアル』(編著:武内裕之) があります。
この本は、先生のご指示のもと、私たちグループのメンバーが分担執筆したものです。
武内先生の想いと哲学が、細部に至るまで色濃く反映されています。
2008年4月に出版され、先生はその年の11月にお亡くなりになりました。
まさに、最後の集大成でした。
出版から10年以上が経ち、内容の一部は古くなったところもあります。
しかし、その根底にある思想──
術式や術前後の管理を標準化し、クリティカルパスを用いて臨床データを体系的に取得し、研究と教育を両輪として回すという仕組みは、今でも輝きを失っていません。
多数の技術認定医を輩出し、認定医取得のプロセスまでも標準化したシステムを構築できた施設は、当時も今もほとんどありません。誰もが到達できる境地ではなかったと思います。
もちろん、武内先生のトップダウンの力は凄まじく、パワハラ上司であったことも否めません。しかし、それゆえに到達できた境地でもあったのでしょう。私自身、あの場に居合わせることができたことは、一生の宝物ですし、今の私を形作る医師としての土台でもあります。
昭和の働き方をすべて肯定するわけではありません。ただ、あのような時代だったからこそ、あのようなことができたのかもしれません。私のアンビバレンツは、このあたりにもあります。
もう一度あの時代に戻って、同じ働き方ができるかと問われれば、答えは明確にNOです。
しかし、あの時代がなければ、今の私は存在していない──
それもまた事実なのです。
私にとって、師匠の教え、そしてあの教科書は、アンビバレンツの象徴でもあります。


