不妊カウンセリングを「伝える」ということ -ドラマ撮影に参加して感じたこと-

先日、ご縁がありドラマの撮影に参加しました。
現在制作中のため詳しい内容はまだ公表できないのですが、専門職の学びを目的とした映像制作で、ドラマ形式である場面を再現するという試みでした。

今回の撮影を通して感じたのは、普段の臨床の場面を「学びの素材」として伝えることの難しさと面白さでした。

日常の臨床では、相談に来られる方と一対一で向き合い、その場で生まれる言葉や沈黙、表情の変化を感じ取りながら関わっています。

しかし、それを映像として再現するとなると、一つひとつの言葉や間、視線の向け方などがどのように見えるのか、どのように伝わるのかを改めて考える必要があり、普段は自然に行っている関わり方も、「なぜその言葉を選ぶのか」「なぜその沈黙を大切にするのか」といったことを改めて意識する機会になりました。

撮影現場は想像以上で、ほんの数十秒の場面を作るために監督さん、映像さん、カメラさん、マイクさん…と、制作スタッフだけでも多くの人が関わり、細かな確認や調整を重ねながら進んでいきます。台詞の言い回し、何気ない会話の一言や、視線の動き、わずかな沈黙。ほんの少しの違いで登場人物のきもちの伝わり方が変わるため、どう表現するかを丁寧に作り上げていく過程がとても印象的でした。

今回、私はクライアントを演じましたが、改めて感じたのは、カウンセリングは「言葉」だけで成り立っているわけではないということです。

相談に来られる方の気持ちは、必ずしも最初から言葉として表れるわけではありません。表情や沈黙、視線の動きなど、さまざまな形でその思いが表れてきます。その時間を急がずに受け止めることの大切さを、今回の撮影を通して改めて実感しました。

また、不妊カウンセリングの現場では、相談に来られる方が勇気を出して扉を開けてくださることが少なくありません。誰にも話せなかった思いを抱えて来院される方も多く、その最初の一歩の重さを感じることがあります。

今回の撮影では、そうした「相談に来るまでの気持ち」や「初めて話すときの緊張感」も大切に表現できればという思いで臨みました。

普段の臨床を少し離れて眺めてみると、自分たちが日々大切にしている関わり方や姿勢が、実はとても繊細で奥深いものであることに改めて気づかされます。そして同時に、これからも一人ひとりの相談者の方と丁寧に向き合っていきたいという思いを強くしました。

完成した映像が、学びを深めたい方々にとって役立ち、現場でのクライアント支援につながっていくことを願っています。

今回の経験を通して、普段の臨床で大切にしていることを改めて見つめ直すことができました。とても楽しかったですし、自分自身にとって大きな学びとなりました。
チームの先生方や撮影に関わってくださった皆さま、頑張ってねと送り出してくれた菊地院長に心より感謝するとともに、この経験を今後の実践にも生かしていきたいと思います。

鏑木