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特別編 院長

~特別編~ 第18章:その先の未来へ──働き方改革の提案

がむしゃらに働いていた私ですが、それなりに評価してくださる方々は多かったようです。
実際、私のもとにはさまざまなオファーが届いていました。大学の教授選、他院の院長職──いわば“売り時”だったのかもしれません。

理事長からのご指示で、教授に昇格させて大学に残す案もあったと聞きました。学部長からその話を直接伺いましたが、私の気持ちは揺らぎませんでした。
というのも、大学に残る限り、この恐ろしく多忙な生活は続く。
思えば、家族を顧みず、仕事にまい進してきた毎日。
どこかで“落とし前”をつけなければならない──
そう考えていたのです。
自分の身体を労わり、私を指導してくださった先生方のように、早世することがないようにしたい。
そんな思いが強くなっていました。

そんな中、理事長から“面白いオファー”がありました。
「辞めるのは認める。ただし、何か建設的な意見を出せ。」
当時の理事長はとても恐ろしい存在でしたので、私にそのようなことを仰るとは思ってもいませんでした。
しかし、これはありがたいチャンスだと考えました。
自分のためではなく、後輩たちのために。
少しでも医局の環境が良くなるように。
そう願い、それまで長く温めていた案を提出しました。
その内容は──
今でこそ医師にも働き方改革が適用され、当たり前になりつつあることです。
しかし、これは8年前の話。
まだ改革の“か”の字もなかった時代でした。
私が強く訴えたのは、特に産婦人科のように当直がデフォルトであり、女性医師も多い診療科での問題でした。
子育て中の医師が、男女問わず当直業務に参加できるようにすること。
それにより、業務負担を均等にできること。
その一点でした。
子育て中でも子連れで診療が可能となるよう、
24時間365日、院内に病児保育室を設置すること。 
これが私の願いでした。
当時は、子持ちの女性医師が当直を免除されることが多く、その負担が男性医師に偏っていました。
私自身もその煽りを受けていたため、不公平感をなくすには必要だと考えたのです。
ただ、当時はあまり響かなかったようでした。
しかし、今振り返れば、先見の明はあったと思っています。
あの提案が、何かしら今の働き方改革につながっていったのではないか──
そう感じています。