個人情報
当院でも利用している予約システム「アットリンク」が、サイバー攻撃を受けた可能性があるとして調査が行われており、現在システムが停止しています。
すでに報道もなされておりますが、患者さんには大変なご不便とご心配をおかけしており、心よりお詫び申し上げます。
今回の件に限らず、近年は企業や医療機関、行政機関などを問わず、サイバー攻撃や個人情報流出に関する報道を目にする機会が増えました。
現時点では、アットリンクにおいて実際に情報流出が発生したかどうかは公表されていません。
しかし、この一件を通じて、便利なシステムを利用することの恩恵と同時に、その裏側に存在するリスクについて改めて考えさせられました。
個人情報と一言で言っても、その内容はさまざまです。
氏名や生年月日、連絡先だけでなく、近年では行動履歴や利用履歴などもデータとして蓄積される時代となっています。
もちろん、患者さんからお預かりした情報を守ることは医療機関として極めて重要な責務です。
もし何らかの形で情報が漏洩するようなことがあれば、それは患者さんの信頼を損なう重大な問題です。
一方で、このような事態が起きるたびに考えるのは、「どこまでの情報をシステムに登録するべきなのか」という点です。
便利さを追求すればするほど、多くの情報を入力し、多くの情報を保管することになります。
しかし、その情報量が増えるほど、万が一の際のリスクも大きくなります。
これは特定のシステムや企業の問題というよりも、デジタル化が進んだ社会全体で考えていかなければならない課題なのかもしれません。
そんなことを考えていて、ふと昔の出来事を思い出しました。
私が浦安市と共同で卵子凍結プロジェクトを進めていた頃のことです。
行政が補助を行う卵子凍結事業として国内外から注目を集め、多くの方からメールをいただきました。
批判的な意見もありましたが、大半は応援や激励のメッセージでした。
ただ、そのとき不思議に思ったのです。
「なぜ皆さん、私のメールアドレスをご存じなのだろう?」
当時は今ほど個人情報流出が話題になっていた時代ではありません。
そこで何人かに尋ねてみたところ、返ってきた答えは実にシンプルでした。
「検索すれば出てきますよ。」
言われてみればその通りでした。
私のメールアドレスは、これまでに発表した論文の連絡先として掲載されていました。
論文データベースや検索エンジンによって紐づけられ、世界中の誰でも見つけられる状態になっていたのです。
その事実に気づいたとき、逆に「メールアドレスくらいなら公開されていても良いのかもしれない」と考えるようになりました。
もちろん、その代償もあります。
迷惑メールや怪しいメールは毎日のように届きます。
しばらく整理を怠ると、一日に数百件のメールが届くこともあります。
診療や仕事の合間に削除していくことが、いつの間にか日課になってしまいました。
怪しいメールは開かないようにしていますが、その中に大切な連絡が紛れていることもあります。
海外から届くメールもありますから、一律に無視するわけにもいきません。
なかなか手間のかかる作業ではありますが、その程度の負担であれば、メールアドレスを公開すること自体は大きな問題ではないようにも思っています。
ただし、それ以上の情報についてはどうでしょうか。
本当に必要な情報なのか。 本当に保存しなければならない情報なのか。
便利さを求めるあまり、必要以上の情報を集めてはいないか。
今回の出来事は、そのことを改めて考えるきっかけになりました。
これからの時代は、「どのように情報を集めるか」だけではなく、「どの情報は集めないのか」を考えることも重要になってくるのかもしれません。


