オールドメディアとSNS
昨今のSNSなどのネット情報の発展は目を見張るものがあり、新聞・テレビやラジオなどよりも、SNSから情報を得る方々が、特に若者を中心に急増していると言われます。誰でも気軽に情報発信ができるようになったことは、喜ばしいことである反面、でたらめな情報が拡散されてしまうリスクを孕むことにもなりました。特にSNSはそれを見る方がよく検索する情報を主に表示する機能がありますので、いわゆる「エコーチャンバー現象」と呼ばれるような、ともすれば極論に走ってしまう可能性もあります。
一方、新聞・テレビなどのこれまでの“オールドメディア”は、その方々の矜持として、しっかりとした取材によるエビデンスのある報道を行ってきたはずです。ただ、この“はず”が最近揺らいでしまったため、オールドメディアに対する不信感が増大、結果としてSNSの情報を鵜吞みにする方々が増えたように感じております。
我々が関係するところでは、医療に関する情報について、それがその方にとっての事実であったとしても、ある特定の個人の発言をそのまま、あたかも金科玉条のように揺るぎない事実として発信するオールドメディアもあるように思うのです。以前、このブログでもお話したことがありますが、ガイドラインなどで扱われるエビデンスレベルでは、この専門家の意見、は最もレベルが低いものとして扱われており、大規模な研究による強いエビデンスに対して、そのようなエビデンスに因らない特定医師の意見のみでは上述のでたらめな意見となってしまうリスクがあるのです。もちろん、その専門家がエビデンスレベルの高い論文などを論拠にお話をするのであれば問題ないと思うのですが、マスコミ側もある程度恣意的な誘導をすることも多く、結果として例えば、HPVワクチン報道のように、禍根を残してしまうこともあるのかもしれません。
それでも私は、オールドメディアの矜持を信じたいと思います。SNSで質の高い情報発信をしている方々もいらっしゃるわけですから、餅は餅屋、その道のプロとして、エビデンスの高い報道を行っていただくことに一縷の望みをかけたいと考えます。
医療行為に100%はありえません。医師が悪意を持って医療過誤を起こすことは皆無と信じたいです。オールドメディアに向けられた不信は、我々にも突き刺さっております。だからこそ、良い医療が提供できるように我々は努力を続けなければならないのです。
このことは、様々な職種に対して、プロとしての矜持が問われているのだと思います。SNSによって我々メディアの素人が情報発信できるようになったことは素晴らしいと思いますが、あくまで素人です。オールドメディアにまだそのプロとしての矜持が残っているのであれば、安心して信じてよい情報を発信してほしいと切に願いますし、我々も同様、襟を正したいと思います。