大学病院と医師の働き方改革

私はメディカルパーク横浜の院長に就任する前は大学病院に勤務しておりました。最後のポジションは先任准教授(旧助教授)であり、次のステップとして教授になる可能性もありました。メディカルパークに異動する際大学には、私の本当にやりたいことのみに集中したいという我儘を聞き入れていただいたと考えておりますので、大学には感謝こそあれ、ネガティブな感情はありません。

しかしながら、昨今の報道で大学病院のあり方が今まさに問われているのではないかと感じ、ブログに残しておきたいと思います。どの程度の方にお読みいただくかはわかりませんが、ここに今の気持ちを書きとどめておこうと考えました。今後、状況が変われば、自分でも読み返し、何が変化したかをいつか記すことが出来れば嬉しいです。

”24時間戦えますか?“というキャッチフレーズは、とある栄養ドリンクのCMのものでしたが、私が学生の頃は家に帰らず仕事と遊びに明け暮れることが当然とされ、そこには家庭を大事にする父親の姿はありません。日曜も接待ゴルフなどで家に帰らずに仕事をする、いわば”企業戦士“が若者の間でも素晴らしいとされた時代があったのです。30年ほど前のことですが、今とは全く異なる価値観です。そのような環境では、特に女性は結婚して家庭(子育て)か、仕事か、どちらかの選択に迫られることも多く、結果として女性の働きづらさや、給与所得の格差につながってしまいました。

さて、医療現場ではどうだったかといいますと、この“24時間戦えますか?”のさらに酷い状態でした。24時間どころか、48時間、96時間連続勤務もザラでした。いや、今でもその状態は改善しているとは言えないでしょう。患者さんの急変や、緊急の手術など、病院は基本的に24時間体制ですから、当直のduty以外にも、人手が必要であれば病院に残って仕事を行う必要があるのです。あえて申しますと、患者さん側からしてみれば、診てもらって当然、という感覚も否めないのではないでしょうか?ただ、そのプレッシャーは医師に重くのしかかり、過長労働の原因の一つになっているのだと思います。さらには、医師は高給取りだからそのくらい当然、というお考えもあるかもしれませんが、これには大きな誤解があります。それに関しては別の機会にお話したいと思います。

私個人の意見ではありますが、そもそも女性だけが家事・育児を行うという考え方自体が誤っているとは思います。ただ、過酷で人手が不足している医療現場においては、家に帰ること自体が困難であるため、家庭を大事にする医師は男女問わず敬遠されてしまうのです。その多くの場合、特に子育て中の女性医師が割を食うことになり、母校でも起こってしまった入学試験の男女差につながったのだと感じております。母校だからと擁護するわけではありませんが、どうかその背景をご理解いただきたいと思います。