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特別編 院長

~特別編~ 第22章(あとがき)──静かに選んだ道の先で

振り返れば、私の医師としての歩みは、決して計画されたものではありませんでした。
落ちこぼれとして産婦人科に拾っていただき、その後も、偶然の連続のような日々でした。
ただ、その偶然を偶然のままにせず、「何か先につながるものはないか」と考え続けてきたことが、結果として今の自分を形づくってきたのだと思います。

若い頃、私は教授になることを自然な目標だと感じていました。
その背景には、志半ばで倒れた師匠の存在があります。
師匠が見られなかった景色を、自分が少しでも見たい──そんな思いが、私を前へと進ませていました。
気づけば、周囲から「上を目指す側」に見られる時期もありました。
ただ、それは自分が特別だったというより、流れの中でそう見えただけのことです。
そして、少しだけ高い場所から景色を覗く機会がありました。
その景色は、思っていた以上に遠く、そこに到達するためには、努力だけでは足りないことを知りました。代償の大きさも、身近な人たちの姿から学びました。
そのとき、私は静かに考えるようになりました。
自分がどこまで進むべきなのか。
何を守りたいのか。
どこで立ち止まるべきなのか。

オバマ氏は、かつてこう語っています。
「ホワイトハウスに入る前、私は仕事で家を空けることが多く、ミシェルは娘たちに必要なことのほとんどを一人で担っていました。」
そして、
「今ではほぼ毎晩、家族と夕食を取れるようになりました。」
若い頃に家族へ負担をかけていたことを認め、その後の人生で家族との時間を取り戻したいという思い。その言葉は、私にも静かに響きました。
私にも、がむしゃらだった時期があります。
妻に迷惑をかけた時期があります。
だからこそ、今はその埋め合わせのステージに立っています。
失った時間を、少しずつ取り戻しています。
そして今、実地臨床で不妊治療に励む毎日は、ちょうどいいバランスをもって、「私ができること」をそのまま形にしているように思うのです。
高い場所の景色を少しだけ知ったからこそ、今の静かな生活が、より大切に思えるようになりました。

私の人生は、上を目指す物語ではなく、静かに選んだ道を歩く物語なのかもしれません。