子宮内膜症と不妊症①(治療方針について)
子宮内膜症は20代から30代の女性に好発する月経困難や下腹部痛、性交痛などを呈するご病気で、妊娠を考える年代に合致するため、不妊症の原因にもなる、今後妊娠を目指す方にとっても厄介なものです。基本的な病態として、発症する部位によって「腹膜病変」「卵巣子宮内膜症」「深部子宮内膜症」「他臓器子宮内膜症」の4つに分けられます。卵巣子宮内膜症は、卵巣嚢腫として超音波などで診断できますが、腹膜病変については、今でも腹腔鏡検査によって確定診断することになっております。
月経があること自体が子宮内膜症の原因の一つと言われ、悪化させてしまう要因にもなってしまいます。よって、治療としては、月経量を減らすように低用量ピルを使用する(実際にはそれ以外のホルモン適な作用もありますが今回は割愛します)、または、閉経する、または閉経状態になるような薬を使用する偽閉経療法を行う、などが考えられます。さらには妊娠することも治療的に働くことになります。
現代女性は、多産ではなくなったため、生涯の月経回数が多く、それ故に子宮内膜症のリスクが高くなっているとも言われておりますので、ある意味、現代病とも言える疾患だと思います。
不妊を伴う子宮内膜症を疑う場合には、ひと昔前ならまずは腹腔鏡検査を行い、治療方針を決定することが基本でした。同様に卵巣子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)の場合には、腹腔鏡手術で卵巣嚢腫を摘出、その後の自然妊娠を期待することが多かったのです。
しかしながら、卵巣嚢腫の手術は、卵巣機能を低下させ、AMHも低下することになります。ですので、なるべく手術を行わず、上記のようなホルモン製剤などで治療するか、妊娠を考える方の場合には、保険適用になってからは、不妊治療を先行することも選択肢になりました。特に体外受精が前提であれば、卵巣チョコレート嚢胞の手術の有無で治療成績が変わらない(M. Hamdan, G. et al., The impact of endometrioma on IVF/ICSI outcomes: a systematic review and meta-analysis, Human Reproduction Update, Volume 21, Issue 6, November/December 2015, Pages 809–825)という報告もあり、特にわが国のように妊活開始が遅い場合には、体外受精を先行するほうが良いと思われます。ただし、深部子宮内膜症の場合には、しっかりとした手術を行う方が良い場合もあるそうなので、それは次回またお話したいと思います。