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院長

資産形成の時代に、医師としての使命をもう一度考える

医師のキャリアについて語るとき、最近は「資産形成こそ正義」「給与が上がらない医局は搾取」「美容医療で稼ぐべき」といった言説がSNSで目立つようになりました。
背景には、将来への不安があるのだと思います。
給与は上がらず、税負担は増え、社会保障は不透明で、奨学金の返済が重い。
家族を守る責任もある。
こうした現実を前にすれば、資産形成を急ぐ気持ちになるのは当然ですし、私自身も資産形成の重要性を否定するつもりはありません。
しかし、それでも思うのです。せっかく人として生まれ、医師になったのであれば、自分の専門性を世に還元していくことは、とても大切な使命ではないかと。

資産形成は「不安への対処」であり、専門性の還元は「人生の意味」です。
医師という職業は、本来この“意味”を生み出せる稀有な仕事です。
もちろん、医師の世界には避けがたい構造的な格差があります。
実家が太く資産に不安がない医師もいれば、奨学金で医師になり返済のために働かざるを得ない医師もいる。
この差は努力だけでは埋まりませんし、キャリアの選択肢にも影響します。
研究に時間を使える人もいれば、生活のために臨床を優先せざるを得ない人もいる。
海外留学が容易な人もいれば、経済的に難しい人もいる。
こうした構造的な差は確かに存在します。

しかし、それでも医師としての幸福は資産の多寡では決まりません。
医師の価値は、自分の専門性がどこで最も生きるかで決まるからです。
大学で輝く人もいれば、市中病院で専門性を最大限に発揮する人もいる。
研究に没頭することで幸福を感じる人もいれば、地域医療の中で患者さんと深く関わることに喜びを見出す人もいる。
大切なのは、自分がどこにいれば最も美しく咲けるかを、自分で選ぶことです。
「置かれた場所で咲きなさい」という言葉がありますが、どこに置かれるかを選ぶ権利は、本来自分自身にあります。
医局の都合や制度の力学だけで人生を決める必要はありません。

自分の専門性が生きる場所、自分の矜持が輝く場所、自分が医師として“意味”を感じられる場所を選ぶこと。
それがキャリア形成の核心だと思うのです。
資産形成は人生の一部ですが、医師としての使命は、自分の専門性を社会に還元することにあります。
その瞬間は給与明細にも資産額のグラフにもSNSのタイムラインにも書かれません。
しかし、確かにそこに存在し、医師としての人生を豊かにしてくれるものです。

資産形成の時代だからこそ、医師としての使命を静かに見つめ直すことが必要なのかもしれません。
自分が最も輝ける場所で、自分の専門性を世に還元する。
その選択こそが、医師としてのキャリアを美しくするのだと私は思っています。