培養室
【基礎内容】培養液について①
身体の中で起こる受精の場は“卵管(卵巣から子宮までの卵の通り道)”です。したがって、培養液とは、卵管から子宮までに分泌される成分を模倣し、受精の場である卵管に存在している栄養素が含まれている液になります。 <培養液が使われるケース(用途に応じて使う培養液の種類が違います)> ヒト血清アルブミン等の生物由来成分や抗生物質を一切含まない、採卵時の卵子の洗浄用メディウムです。Heparinが含まれている…
【設備技術紹介】クリーンベンチのお話
今回はクリーンベンチについてお話します。下の写真は当院のクリーンベンチになります。 クリーンベンチとは、清潔な環境で作業を行うことの出来る作業台のことを言います。外部からの汚染を防ぎ、無菌的な環境を作り上げるのが目的ですが、ではどのようにしてその環境を作っているのでしょうか。 それは空気の循環です。 まず下写真の開口部から外気が導入されます。導入された外気は、天井でHEPAフィルターによ…
【お知らせ】不妊検査キャンペーン
当院では11月より限定的に不妊検査のキャンペーンを行います。 そこでは「女性:卵巣機能検査」「男性:精液所見検査」の2つを対象にしておりますが、今回は「卵巣機能検査」についてお話したいと思います。 *「精液所見検査」についてはブログ内「精液検査について」を参照ください 検査概要 卵巣機能検査では大きく3つの項目を検査させていただきます。 ①LH、FSH、E2について 卵巣機能の生化学的検査になり…
【基礎内容】ART概論について
ARTとは ART(Assisted Reproductive Technology)とは配偶子である精子・卵子を取り扱い、生殖を補助する不妊治療のことです。「高度生殖補助医療」ともいいます。 適応 その他、患者様の年齢、不妊期間、卵巣の予備能を考慮いたしまして適応があれば対象となります。 受精方法の選択 受精方法は、取り出した卵子と精子を合わせて体外で受精させる「体外受精(IVF)」 顕微鏡下で…
【設備技術紹介】卵子活性化のお話
今回はカルシウムイオノフォア(卵子活性化)についてお話します。 まずカルシウムと言えば、骨や歯のイメージが高いかと思います。実際にカルシウムの約99%は骨や歯、残りの約1%は神経伝達や筋肉で使われており、その量は体重の1~2%と生体内で最も多いミネラルなのです。このカルシウムが受精時の卵子を活性化する因子としても必要不可欠な因子となります。 ではカルシウムイオノフォアとは何なのか。 それは細…
【基礎内容】精子凍結・融解について
今回は、『精子凍結・融解』について説明します。 精子凍結とは TESE(精巣内精子採取術)や射精して採れた生きた精子を保存液で処理し、-196℃の超低温(液体窒素)で保存する技術です。 安全面について 凍結融解精子を用いて生まれたお子様は、新鮮精子を用いて生まれたお子様と比べて、発育状態に差が出たり、先天奇形などの異常の頻度が高くなるという報告はありません。 1952年にイギリスのC.Polgeら…
【お知らせ】第21回 横浜ART研究会
第21回 横浜ART研究会に当院培養士スタッフにて参加させていただきました。 基礎的な内容や、日々の臨床業務と照らし合わせられる内容まで幅広く有意義な時間となりました。話の中で興味深かったものは「卵巣刺激(体外受精)の有用性と疫学的理解」といったものです。 生殖補助医療の治療戦略の一つとして卵巣刺激というものがあります。卵巣刺激の目的は“お薬の力を借りて複数の卵子を獲得する”となっています…
【基礎内容】精液検査について
精液検査とは、1回の射精で得られる精液の量と、精液内の精子の状態を調べる検査です。 方法 自宅で採取して持って来る「検体持参の方法」と、「クリニック内で採取する方法」とが選べます。 基準値は以下の表の通りです↓ 注意事項 当院では、精子量・精子濃度・運動精子率(動いている精子の割合)・正常形態精子率(正常な形の精子の割合)を測っています。 精液所見の下限基準値 男性不妊の分類 精液量 1.5mL …
【設備技術紹介】培養室内環境のお話
今回は培養室についてお話します。写真は当院の培養室です。 培養室はクリーンルームとして設定されており、胚の培養を行う場所であるため常に清潔に保たれています。 清潔に保てる理由としては、まずHEPAフィルター(high efficiency particulate air filter)と呼ばれるフィルターを搭載しているところにあります。 HEPAフィルターは、『定格風量で粒形が0.3μmの粒子に対…
【お知らせ】ワークショップ参加
培養液メーカーのセミナーに当院培養士スタッフで参加しました。我々培養士にとって、メーカーより専門的な情報を頂く事ができる非常に貴重な時間となりました。 セミナーのキーワードは“グロースファクター”です。Growth=成長、Factor=因子という事で、特定の細胞を増やしたり成長させたりする働きを担う物質を示します。筋トレ後、筋肉痛になって「効いてるな…」という時にも一過性でグロースファクターが…