院長
突き抜けた者の孤独と使命
ある尊敬する医師が、かつてこう仰いました。「突き抜けた者は、柱にならなければならない、周囲を守るために。」この言葉は、私の心に深く残っています。「柱」という言葉、当時はまだ鬼滅の刃の連載開始前でしたから、結果として私は鬼滅の刃に興味を持ったのかもしれません。突き抜けるということは、ただ努力を重ねた結果ではありません。もちろん、血の滲むような研鑽は必要です。しかし、それだけでは足りません。支えてくだ…
午前3時の総理と当直明けの執刀医──制度疲労が生む“働きすぎ”の構造
2025年11月、高市早苗総理が「午前3時に公邸で答弁書を確認していた」と報じられ、SNS上では驚きと疑問の声が広がりました。この背景には、国会質問通告の遅延という“慣例”が存在しています。質問通告は本来、委員会開催の2日前正午までに行うべきとされていますが、実際には前日夕方から夜にかけてずれ込むことが多く、官僚たちは深夜に答弁書を作成し、総理や閣僚は早朝にチェックするという非人間的なスケジュール…
群馬生殖医療研究会での講演を通じて:卵子凍結と「選択」のテクノロジー
先週末、第9回群馬生殖医療研究会にて講演の機会をいただきました。大学の先輩でもある、産科婦人科館出張佐藤病院の佐藤雄一院長からのご指名ということで、大変光栄でした。今回の講演では、私が関わってきた地方自治体との卵子凍結支援プロジェクトについて、そしてその社会的な意味合いについてお話ししました。内容としては、卵子凍結という技術が持つ「選択肢の拡張」という側面に焦点を当てました。 卵子凍結は少子化対策…
「初めて」の力──女性総理誕生と医局の変化
日本初となる女性総理が誕生しました。SNSを眺めていると、期待と同時に批判的な声も少なくないようです。もちろん、政治的な評価は人それぞれですが、私個人としては、まず「女性初」という事実に大きな意味を感じています。これまで男性が独占してきた政治のトップに、女性が立ったということ。それは、社会の深層にある固定観念に一石を投じる出来事であり、未来への扉がひとつ開いた瞬間でもあります。奇しくも同じ時期に、…
年収1,000万円は「貧困」なのか?
「年収1,000万円でも貧困」というタイトルの記事を目にして、思わず驚いてしまいました。一般的な感覚では、1,000万円という年収はかなり高い部類に入るはずです。しかし、その記事によれば、東京都内で子ども2人を育てるには「とても足りない」という現実があるとのことでした。確かに、都市部では家賃や物価が高く、教育費や子育てにかかる費用も地方とは比べものにならないほど膨らみます。とはいえ、私自身も少し前…
卵子の質と社会制度──技術が選ぶ「未来の遺伝子」、制度が支える命の可能性
はじめに「卵子の質」とは、生命を育む力──すなわち「生物学的有能性(competence)」を指します。2010年に発表されたMartinらの論文は、卵子提供者の中に「best-prognosis donor(予後良好ドナー)」と呼ばれる、繰り返し高い出生率を示す人々が存在することを示しました。彼らの卵子は、同じ数でもより多くの命を育む可能性を秘めているのです。この知見は、卵子の数ではなく質こそが…
社会の変化のスピード
現在、我々メディカルパークグループ(医療法人桐杏会)のテレビCMがフジテレビで放映されています。ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。少し前にスキャンダルが報じられたこともありましたが、それでもフジテレビは依然として日本を代表するマスメディアのひとつです。かつてフジテレビは新宿・河田町にあり、東京女子医大のすぐ近くでした。学生時代、あの界隈を訪れた記憶があります。確か社内食堂は一般にも開放さ…
生物学的な違いとジェンダーギャップ
このような話題に触れると、時に批判の対象となるかもしれません。ですが今回は、不妊治療の現場に身を置く者として、日々感じていることを率直に綴ってみたいと思います。まず大前提として、性別による差別や役割の強制は決して許されるべきではありません。しかし、妊娠・出産に関しては、生物学的に男女の役割に明確な違いがあることもまた事実です。子どもを持つかどうか、いつ、何人持つかという選択は人権の一部であり、尊重…
