院長
年収1,000万円は「貧困」なのか?NEW
「年収1,000万円でも貧困」というタイトルの記事を目にして、思わず驚いてしまいました。一般的な感覚では、1,000万円という年収はかなり高い部類に入るはずです。しかし、その記事によれば、東京都内で子ども2人を育てるには「とても足りない」という現実があるとのことでした。確かに、都市部では家賃や物価が高く、教育費や子育てにかかる費用も地方とは比べものにならないほど膨らみます。とはいえ、私自身も少し前…
卵子の質と社会制度──技術が選ぶ「未来の遺伝子」、制度が支える命の可能性
はじめに「卵子の質」とは、生命を育む力──すなわち「生物学的有能性(competence)」を指します。2010年に発表されたMartinらの論文は、卵子提供者の中に「best-prognosis donor(予後良好ドナー)」と呼ばれる、繰り返し高い出生率を示す人々が存在することを示しました。彼らの卵子は、同じ数でもより多くの命を育む可能性を秘めているのです。この知見は、卵子の数ではなく質こそが…
社会の変化のスピード
現在、我々メディカルパークグループ(医療法人桐杏会)のテレビCMがフジテレビで放映されています。ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。少し前にスキャンダルが報じられたこともありましたが、それでもフジテレビは依然として日本を代表するマスメディアのひとつです。かつてフジテレビは新宿・河田町にあり、東京女子医大のすぐ近くでした。学生時代、あの界隈を訪れた記憶があります。確か社内食堂は一般にも開放さ…
生物学的な違いとジェンダーギャップ
このような話題に触れると、時に批判の対象となるかもしれません。ですが今回は、不妊治療の現場に身を置く者として、日々感じていることを率直に綴ってみたいと思います。まず大前提として、性別による差別や役割の強制は決して許されるべきではありません。しかし、妊娠・出産に関しては、生物学的に男女の役割に明確な違いがあることもまた事実です。子どもを持つかどうか、いつ、何人持つかという選択は人権の一部であり、尊重…
卵子凍結キャッシュバックキャンペーンのお知らせ
将来の妊娠に備えた「計画的卵子凍結(社会的卵子凍結)」に関心が高まる中、東京都では最大20万円の公的助成制度が整備されており、18歳〜39歳の都民が対象となっています。さらに、2025年度からは子ども家庭庁が希望する自治体に対して卵子凍結の助成を行うモデル事業を開始する予定であり、全国的な制度拡充への期待も高まっています。 一方、神奈川県では現時点で社会的卵子凍結に対する公的支援はなく、がん治療な…
医療格差の衝撃――地域によって変わる「受けられる医療」
私は高知県の片田舎で育ちました。先日、高知大学医学部附属病院で県内初となる無痛分娩が行われ、母子ともに健康な出産が報じられました。実は、高知県は全国で最後まで無痛分娩を導入していなかった県です。一方、東京では自治体が無痛分娩に助成金を出す動きすらあります。この圧倒的な地域差を前に、医療資源の偏在を改めて痛感しました。 無痛分娩導入の遅れが示すもの無痛分娩を実施するには、麻酔科医や専門助産師など複数…
バレエ鑑賞のひととき
実は、私の娘はバレリーナです。最近、とあるバレエ団に入団したばかりで、現在は「コールド」と呼ばれる、主役の背後で踊る群舞の役を務めています。まだ目立つポジションではありませんが、プロとして舞台に立ち、仕事として取り組んでいる姿を見ると、親としては応援せずにはいられません。少し前になりますが、娘の出演する公演を観に行ってまいりました。 演目はチャイコフスキー作曲の『白鳥の湖』。彼の代表的なバレエ作品…
「996」という働き方──ポルシェではなく、中国の労働文化の話
「996」と聞いて、車好きの方ならポルシェ911シリーズのうち、水冷化された初代モデル──通称「涙目」──を思い浮かべるかもしれません。発売当初は賛否両論ありましたが、今では一定のファン層を獲得しているようです。しかし今回のテーマは車ではなく、近年中国で問題視されている「働き方」の話です。 中国IT業界に根付いた「996」「996」とは、朝9時から夜9時まで、週6日働くという勤務スタイルを指します…
