~特別編~第15章:不整脈──死を意識した瞬間
心臓は人体の中でも重要な臓器のひとつで、一生で約20億回拍動すると言われています。その拍動が止まるということは、すなわち“死”を意味します。血液を循環させるために休むことなく動き続ける心臓ですが、身体の状態に応じて心拍出量を調整するシステムが働いています。これは主にホルモンによって制御されますが、ストレスなどでホルモンが変動すると、心臓には大きな負担がかかります。 当時の私は、自分ではストレスを感…
~特別編~第14章:台風の目──技術開発と嫉妬の渦
その後、私はさらに注目を集めることになり、マスコミの取材や講演会への招待、学会発表など、再び忙しい日々が始まりました。卵子凍結のプロジェクトだけでなく、腹腔鏡下手術の機器開発も並行して進めていたため、多くの企業からアプローチを受けるようになりました。その中から、いくつかをご紹介したいと思います。 ■ in-bag morcellation腹腔鏡では、検体を細い創から回収するために組織を砕く必要があ…
みいちゃんと山田さんの件
「みいちゃんと山田さん」という漫画がアニメ化されるにあたり、SNS上で激しい議論が起きています。作品は、福祉に辿り着けない、あるいは辿り着こうとしない“分かりづらい障害”を抱えた方の悲劇を描いたフィクションであり、「障害者差別を助長する」という批判と、「このような現実を知るべきだ」という擁護が鋭く対立しています。フィクションである以上、受け取り方には幅がありますが、作品が扱っている領域は、医療や福…
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~特別編~第13章:大波乱──学会との対立と“時の人”へ
市議会の予算委員会は2月に開かれ、それまでに寄付講座の詳細が決定されました。基本的には市長の鶴の一声ではありましたが、市議会も無事に通過し、寄付講座の設立が正式に決定しました。しかし、このプロジェクトはあまりにも特異であったため、プレスリリースに反応したマスコミからの取材依頼が殺到しました。そこで大学と市は、共同で記者会見を開くことになりました。 一方で、学会側にも動きがありました。2013年、米…
~特別編~第12章:卵子凍結プロジェクト──社会性不妊治療講座の誕生
市長の疑問は、極めてまっとうなものでした。「市内の若いAYA世代の女性で、卵子凍結の対象となる人は年間どれくらいいるのか?」という問いです。 当時、対象となり得る市内在住の若年女性は約1万人。その中で卵子凍結を必要とする人が少ないのであれば、市税を投入するプロジェクトとして説得力に欠ける──市長の懸念は当然でした。そこで私は提案しました。「加齢による妊孕性低下に備えるため、理由を問わず希望者に卵子…
~特別編~第11章:熱い市長──政策と情熱の邂逅
浦安市は、巨大テーマパークを抱え、都内で働く人々のベッドタウンとして発展してきました。特に“新町”と呼ばれる埋め立て地の新浦安エリアは、ヤシの木が立ち並び、高級マンションが林立する高級住宅街です。そのため高額納税者も多く、浦安市の財政は非常に健全でした。 3.11の際には液状化など甚大な被害が出ましたが、潤沢な財政のおかげで特別交付税を受けることなく、市内の財源のみで復興できたと伺いました。 担当…
~特別編~第10章:浦安への異動──“生きた証”を残す決意
2年という短い期間ではありましたが、順天堂江東高齢者医療センターでの仕事は非常に充実していました。そして、さらなる飛躍として、私は順天堂浦安病院へ赴任することになりました。前述のように、当時の私はやや厭世的になっており、「生きていた証として、何かを残したい」 という思いが強くなっていました。たとえ大学を辞したとしても、その後に胸を張れる実績を残したい──そんな気持ちが芽生えていたのです。 順天堂浦…
卵子凍結は未来の妊娠を保証する技術ではありません──融解後にうまくいかないケースから考える、正しい理解と上手な使い方
最近、SNSで卵子凍結を経験された方が、融解後に受精を試みたものの結果が得られなかったという投稿を目にしました。投稿者の方の詳細は分かりませんし、医療者として個別のケースについて論じることはできません。ただ、卵子凍結には構造的な限界があり、どなたにでも起こり得る現象であることは、専門医としてお伝えしておくべきだと感じています。 現在主流のガラス化凍結法は、技術が成熟しており、適切に行われれば融解後…
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~特別編~第9章:悲喜こもごも──人生の岐路
浦安への異動が決まった頃、私は別の病院からも声をかけていただいていました。日本大学駿河台病院が改装に合わせて婦人科を一新する計画があり、その部長として来てほしいというお話でした。Tanko手術でご一緒した外科の先生方が、私の手術動画を見て推薦してくださったようです。新しい病院の設計図を見ながら意見を求められることもあり、その熱量に触れるうちに、私自身も心が傾き始めていました しかし、その矢先に山形…
