DFI(DNA Fragmentation Index)検査について
近年、不妊治療や妊活に取り組むカップルの中で「男性側の検査」の重要性も少しずつ知られるようになってきました。
しかし、「精液検査をして異常はなかった」と言われても、なかなか妊娠につながらない…。
そんなケースも少なくありません。
その原因は「精子のDNAの質」にあるかもしれません。
今回は、そんな見た目ではわからない精子の中身を調べる【DFI検査】について、ご紹介したいと思います。
DFIとは…?ー精子の質を測る指標
一般的な精液検査では、精子の数、運動性、形態などが評価されますが精子のDNAそのものの質や損傷の程度までは確認できません。DFIは、精子のDNAの損傷している精子がどれくらい存在しているかを数値化した指標です。
検査した精子検体のうちDNAの損傷(DNAの断片化)がある精子が全体のどのくらいを占めるかを割合で示したものです。よってDFIの数値が高いほど損傷した精子が多く存在することとなります。外見からはわからないDNAの損傷が、実は受精や着床の妨げになっているかもしれません。
精子DNA損傷の原因…
精子のDNAが損傷する原因は身近なところにあります。


特に男性の加齢は、DFIの上昇に大きく関係していると言われており、40歳を超えると精子のDNA損傷が増える傾向があります。年齢に関係なく高いDFIを示す方もいるため、生活習慣や環境要因の影響も無視できません。
さらにDFIが高いと、受精率の低下・胚の発育低下・妊娠後の流産リスクも上昇することが報告されています。
DFIをお勧めしたい方…
- 一般的な精液検査では異常がなかったが、なかなか妊娠に至らない。
- 受精はするものの、胚の発育が思わしくない。
- 反復着床不全や流産を繰り返している。
- 男性が40歳以上である。
- 原因不明の不妊と診断されている。
このようなお悩みをお持ちの方、なかなか治療がうまくいかずにお困りのかたは検査をご検討頂ければと思います。
検査の流れ
当院でのDFI検査は、以下の流れで行います。
- 精液の採取
当院でお渡しする専用容器に精液を採取していただきます。
※基本的には院内での採取をお願いしています。
- 検査機関への提出
精子を特殊な染料で染色しフローサイトメーターという機器で精子DNAの損傷レベルを解析します。
- 結果の説明
次回来院時に、医師から検査結果をご説明します。
検査結果のみかた
解析後の結果はこのようなデータで提供されます。

グラフ中に青点で示されているものが精子1個ずつです。オレンジの枠内(Moderate DFI:軽度断片化)と赤の枠内(High DFI:高度断片化)に青点が多いほどDNA断片化している精子、つまりDNAが損傷している精子が多いことを示します。
黄緑の枠内(HDS:High DNA Sainability)は未熟な精子を示し、青の枠内の精子が成熟したDNA損傷のない正常精子となります。
これらの3つの枠内(赤・オレンジ枠、黄緑枠、青枠)に何パーセントの精子が存在するか?で結果を表示します。
以下は、DFI(精子DNA断片化指数)および抗酸化力の解析結果の一例です。

左の結果はDFIが・HDSがともにA判定となり、DNAの損傷を受けた精子や未熟な精子が少なく青枠に入る正常精子が多く存在していることを示します。この結果では、正常精子の割合が82.44%と高く、DNAに軽度以上の損傷がある精子の割合は14.96%と低い値を示しています。グラフ上でも、多くの精子が青い枠内(正常範囲)に分布していることが確認できます。
右の結果はDFI・HDSがともにD判定となり、正常精子が少なく未熟な精子とDNA損傷を受けた精子が多く存在することを示します。この結果では、正常精子の割合が41.72%と低く、DNAに軽度以上の損傷がある精子の割合は31.59%と高めです。グラフからも、多くの精子が赤い枠内(損傷ありの範囲)に位置していることがわかります。
このようにDFIが高い値を示し判定がが良くなかった場合、原因のひとつとして酸化ストレスの影響が考えられます。
体内で発生した活性酸素が精子のDNAにダメージを与えることで、DFIが上昇してしまうことがあります。そこで当院では、精液中の抗酸化力も合わせて測定しています。左の結果では抗酸化力がAであったのに対し右の結果では抗酸化力がC判定の結果を示しています。
これにより、どの程度活性酸素のダメージから精子を守れているか(=酸化ストレスの耐性)を確認することができます。
費用について…

DFI検査は自費診療となります。
また、プレコンセプションケア(妊娠前の健康チェック)の一環としても受けていただけます。
費用の詳細は表をご覧ください。
最後に…
DFI検査は治療方針を見直す1つのきっかけになるかもしれません。精子の数や動きだけではわからない、質を評価できる検査です。
検査をご希望の際は、医師やスタッフにお申し出ください。ご不安やご不明点がある場合は、どうぞご遠慮なくご相談ください。