流産・不育症の原因かも?「ネオセルフ抗体」について
今回は流産と不育症について焦点を当てていきたいと思います。
不育症とは?
2回以上の流産や死産の経験があれば不育症と診断されます。すでにお子さんがいる場合でも、2回以上の流死産を経験していれば不育症といいます。
不育症を引き起こすリスクや原因は様々ですが、特定するためには検査が必要になります。
不育症の原因について
不育症のリスク因子として
- 偶発的流産・リスク因子不明
- 甲状腺機能異常
- 抗リン脂質抗体陽性
- 子宮形態異常
- 血液凝固異常
- 夫婦染色体異常
などが挙げられます。
原因によって治療法が異なりますので医師と相談して個別に治療法を決める必要があります。
様々なリスク因子の中に「抗リン脂質抗体陽性」があります。
自己抗体である抗リン脂質抗体により胎盤の血管に血栓ができやすくなるため、流産や死産を繰り返す不育症、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全などの原因となります。
抗リン脂質抗体症候群に関連する自己抗体の一種に、「ネオセルフ抗体」というものがあります。
ネオセルフ抗体検査は、2025年6月から新たに不妊治療分野の※先進医療の項目に追加されました。
ネオセルフ抗体について
抗リン脂質抗体症候群の原因となる新規の自己抗体(β2GPIネオセルフ抗体)です。
AMED研究において、不育症とネオセルフ抗体の関係についての臨床研究が実施され、
- 不育症女性の23%がネオセルフ抗体陽性
- 不育症検査で原因が判明しなかったかたの20%において、ネオセルフ抗体のみが陽性
など、ネオセルフ抗体が不育症の重要な原因となる可能性が示唆されています。
https://www.amed.go.jp/news/release_20200626-03.html
ネオセルフ抗体価は血液検査で調べることができ、結果は採血から2週間~1ヶ月ででます。
なかなか結果に結びつかない・原因不明・・・もしかしたら?
反復着床不全の方、子宮内膜症に罹患している不妊症の方の約30%・原因不明の不育症の方の約20%がネオセルフ抗体検査陽性であるという発表があります。
検査陽性の方はβ2GPIネオセルフ抗体によって血栓が生じやすく、妊娠しにくい・流産しやすい状態といえます。
血栓を予防する治療により、不妊症の方は妊娠成功率が31%程度増加、不育症の方は生児獲得率が37%程度増加するなど報告されています。
原因不明で治療が長引いている方・何度も胚移植してもなかなか卒業できない方・流産をくり返し経験された方におすすめの検査となっています。
ネオセルフ抗体は当院で検査可能ですので、お気軽に医師にお声がけください。