東京ひとり勝ち
年度末になると、国だけでなく地方自治体でも、来年度以降の予算に関する話題が聞こえてきます。我々に大きく影響するのは診療報酬ですが、現時点では詳細はまだ不明です。そうした中、東京都が不妊治療に対して独自の追加助成を行うというニュースが入ってきました。東京都はすでに卵子凍結にも助成を行っていますが、それに加えて、現在保険診療で実施している不妊治療にも上乗せの助成を行う方針のようです。
当クリニックは横浜市、つまり神奈川県にありますが、このようなニュースに触れるたび、都市部近郊であっても格差を感じずにはいられません。以前このブログでも触れましたが、地方ではさらに状況が厳しく、都市部と地方の格差は確実に広がっています。埼玉・千葉・神奈川といった東京周辺の自治体であっても、東京都には太刀打ちできないほどの大きな差が生じているように感じます。
不妊治療が保険適用となった際、厚生労働省に伺ってお話をさせていただいたことがあります。担当の医系技官の方によれば、国民皆保険制度は「患者さんの背景、たとえば収入や自己負担額、さらには地域によって医療に差があってはならない」という理想を掲げて発足した制度だそうです。米国などでは収入格差がそのまま医療格差につながり、多額の保険料を支払える人でなければ高度な医療を受けられません。
一方、日本の国民皆保険制度は、限られた医療資源をどのように配分するかという観点から、医療の質・アクセス・自己負担の三つのバランスで成り立っています。医療従事者に大きな負担を強いている側面はありますが、誰もが比較的低い自己負担で高度な医療を受けられる仕組みになっています。その結果、多くの病医院が赤字に陥っていることは、すでにさまざまなニュースでご存じの方も多いでしょう。
話を戻しますと、そのように「どこでも一定の医療が受けられる」ことを理念とする制度に対し、東京都はさらに独自の上乗せを行っています。これは世界的に見ても非常に手厚い施策だと思われる一方、同じ国内で差が生じることには不安もあります。
さらに、国民皆保険制度を含む社会保障制度は、少子高齢化の進行により、どこかで持続が難しくなることは避けられません。その結果として、病医院の統廃合が進む可能性も高く、地方では医療アクセスの悪化につながる懸念があります。そこに東京都の手厚い助成が重なることで、地域間格差はさらに拡大していくように思われます。 ある意味では仕方のない流れなのかもしれませんが、どこかで「落としどころ」を考える必要があるのではないでしょうか。神奈川県の為政者の方々にも、ぜひ何らかの検討をいただければと願っております。


