大志を抱け!

少し昔の話ですが、後輩の女性医師に、「例えば彼女を次々と替えていくような男性は、非難されることが多いかもしれませんが、それを継続できる活力はすごいし、評価されてもいいと思います」と言われたことがありました。その発言には驚きもありましたが、確かに、誰にでもできることではないという点では納得しました。その活力が仕事やその他の社会的活動に活かせるのであれば、それは素晴らしいことだと思います。

ただし、自身の欲望を満たすために他者を傷つけることは許されるものではありません。社会で暮らす以上、他者と比較し、優位に立ちたいという欲望に駆られて他者を引きずり下ろしたり、嫉妬心から攻撃する行動は慎むべきでしょう。欲望は、しばしば争いの元となります。そして、その争いをなくすためには、欲望を制御する、あるいは「悟り」の境地に至ることが必要かもしれません。

以前このブログでも触れましたが、「悟りの境地」とは、ある意味、生きるための欲望を失った状態とも言えるかもしれません。学生の頃、解剖学の先生から「悟りの境地とはご遺体さんのことかもしれない。」と言われたことがあります。実際に、生命の維持には、欲望が根底にあることが重要です。特に、生殖という観点では「性欲」が生命の継続を支えるものです。よって、欲望そのものを否定することは「生命」を否定することにもなりかねません。ある程度の欲望は、むしろ必要だと考えるべきでしょう。

最近、不妊カウンセラー養成講座の男性不妊に関する話で耳にしたのですが、若年層の性欲が衰えてきているという懸念があるそうです。もしかしたら、性欲だけでなく、争いを避けるために様々な欲望が抑圧されているのかもしれません。それは一方で心配でもあります。

私自身も年齢を重ねていますが、医学の発展に少しでも貢献したいという「大きな欲望」を持ち続けています。それは決して恥じることではなく、人間としての活力の源でもあると信じています。

大きな目標に圧倒され、諦めてしまうことがあるかもしれません。しかし、その目標に向かって小さなステップを重ねていくことで、着実に前進することは可能です。特に若い方には、クラーク博士の言葉を心に刻んでいただきたいと思います。「大志を抱け!」と。