メディア取材へのご協力に感謝

3月1日から8日までは、厚生労働省が定めた女性の健康週間です。それに伴い、毎年2月頃にはメディアの取材をお受けすることが多くなります。このブログでもよくお話しさせていただいておりますが、女性特有の疾患や妊娠・出産など、女性にしかできないことがありますので、当院のような不妊クリニックにメディアの方が取材にいらっしゃるのでしょう。

先日も取材をお受けしましたが、記者の方々は皆さま異口同音に「当事者の方にお話をお聞きしたい」と仰います。読者の共感を得るためには当事者の物語が必要とのこと。もちろん、プライバシーには最大限配慮していただけるとのことですが、基本的に取材は無償ですので、メールなどでボランティアとしてご協力をお願いしております。これまで多くの患者さんにご協力いただいており、感謝の気持ちでいっぱいです。だからこそ、メディアの方々には、その言葉をしっかりと伝えていただきたいと思います。

EBM(Evidence-Based Medicine)と言われるようになって久しく、これまでの多数の知見から得られたエビデンスを基に治療法を選択することが重要とされています。ガイドラインなど、診療の基本方針は大多数の過去の知見から得られたエビデンスを基に決めることが望ましいのは事実です。しかし、この世に全く同じ患者さんは存在しませんので、エビデンスに基づく診療はあくまで最大公約数となります。一方で、NBM(Narrative-Based Medicine)と言われる目の前の患者さんの物語(ナラティブ)をベースにした医療という考え方もあります。患者さんの悩みは人それぞれであり、同じ疾患でも微妙に異なります。
不妊においては、結果が出ないことも多いですから、治療方針について患者さんの納得が非常に重要になります。
以前このブログでも述べましたが、学会ガイドライン | メディカルパークみなとみらい(旧:メディカルパーク横浜)
ガイドラインにも患者さんの好みが反映されるようになってきています。

もちろん、その患者さんの物語はその方個人のものであり、他者にそのまま反映できるものではありません。特別にうまくいった方のお話をお聞きしても、参考にならないかもしれません。しかし、メディアの方々は「共感」を重要視されるようです。だからこそ、私は上手くいった方へのインタビュー同様、上手くいかなかった方へのインタビューもお願いするようにしております。

患者さんにとって取材へのご協力は、ポジティブな話であっても面倒なものでしょうし、さらにネガティブなお話をすることは気持ちの良いものではないと思います。それでもご協力していただける方々に対しては、感謝の気持ちでいっぱいです。この場を借りて、深くお礼を申し上げます。誠にありがとうございます。