【設備技術紹介】GM-CSF含有シングルステップ培養液
今回は着床促進、流産予防にアプローチするGM-CSF含有シングルステップ培養液についてお話します。
流産や反復着床障害の原因としては、ほとんどが受精卵の染色体異常、または子宮内膜の問題、そして受精卵に対する母体からの拒絶反応があります。
ここでお伝えするGM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)は受精卵を受け入れ、妊娠継続を手助けすると考えられています。もう少し難しい言葉でいうと妊娠判定陽性後の流産を減らす効果を期待できるということです。では、GM-CSFはどのように着床・妊娠継続にかかわってくるのでしょうか。
まず、ヒトはいろんな細胞の集合体であり、体外からの細菌やウイルスが入ってきても免疫を司る細胞間でコミュニケーションをとり、細菌やウイルスと戦って体の健康を守っています。
同じように、受精卵が子宮内膜に着床する時も細胞間で、ある物質を介してコミュニケーションをとっています。ある物質とはサイトカインと呼ばれ、細胞間の情報伝達物質の総称です。
この辺りのお話は以前のブログでご紹介しました。
GM-CSFもサイトカインの一つですが、その中でも着床を促し、妊娠維持に重要なサイトカインといわれており、流産を繰り返す患者さんは血中のGM-CSFの量が少ないと報告されています。
では、GM-CSFはどのような働きをしているのでしょうか
まず、着床と妊娠維持の成立には、着床時に子宮内膜で炎症のような反応を起こり、胚が子宮内膜組織に着床しやすい環境が作られます。胚の着床後は炎症が行き過ぎないように炎症を抑えることで妊娠を維持します。
この炎症反応を起こさせるには炎症を起こすサイトカイン(炎症性サイトカイン)と炎症に抗うサイトカイン(抗炎症性サイトカイン)のバランスが重要で、炎症性サイトカインが多すぎると受精卵の受け入れが出来ず、流産してしまいます。
このバランスを保つのが制御性T細胞というもので、炎症性サイトカインを出す細胞に炎症性サイトカインを抑えるように制御性T細胞自身のサイトカインを出して伝えます。
制御性T細胞は自己免疫やアレルギーについてもかかわりのある免疫細胞であり、過剰な炎症反応を抑制することが出来ると言われています。つまり、GM-CSFはサイトカインのバランスをコントロールする制御性T細胞を増やし、間接的に着床、妊娠維持を促すことが出来る事が分かっています。
また、GM-CSFは受精卵が胚盤胞になる確率を高めるという効果もあります。
胚盤胞になるまでに細胞の発生が止まってしまう場合(アポトーシスが起こっている)がありますが、GM-CSFはアポトーシスを抑制し胚盤胞の成長を促す効果もあるそうです。このように、このSAGE 1step GM-CSFという培養液は着床・妊娠継続率をあげる効果と体外培養における胚盤胞獲得率を上げる効果がある事が期待されます。
過去に新しい培養液のお話をした時に、多くの患者様にお問合せをいただきました。その際は採用に至っておらず大変申し訳ありませんでした。一歩でも治療成績を向上させたいと、当院でもこの培養液に期待を持ち、採用したいと思っておりました。
コロナの影響もあり、少し時間がかかってしまいましたが、この培養液の導入準備ができました。近いうちに、ご紹介ができると思います。今しばらくお待ちいただければ幸いです。