【設備技術紹介】培養室内環境のお話
今回は培養室についてお話します。
写真は当院の培養室です。
培養室はクリーンルームとして設定されており、胚の培養を行う場所であるため常に清潔に保たれています。
清潔に保てる理由としては、まずHEPAフィルター(high efficiency particulate air filter)と呼ばれるフィルターを搭載しているところにあります。
HEPAフィルターは、『定格風量で粒形が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能をもつフィルター』と規定されています。空調にHEPAフィルターを搭載することによって空気の循環を作り、ゴミや塵埃などの除去が行われた結果、清潔を維持することができるのです。
写真が当院の空調になります。
また培養室は陽圧になっており、外からの埃などが入りにくく設計されています。こうした作りからも清潔度を保っているのです。
培養室の照明について
次に培養室の照明についてです。
培養される卵子は、通常は光を浴びることなくお腹の中で成長していきますが、体外に取り出された卵子は光を浴びてしまいます。その時に蛍光灯に含まれる紫外線が悪さをしてしまいます。
紫外線には波長の違いによりUVA、UVB、UVCの3つがあり、そのうちUVBとUVCは直接細胞のDNAを損傷させ、細胞分裂や成長を阻害します。余談にはなりますが、UVAとUVBに関しては、体内にも直接吸収され、活性酸素を発生させます。活性酸素は適量であれば身体にとって良い効果をもたらしますが、増えすぎてしまうと細胞質やタンパク質、DNAなどを酸化的に損傷させてしまいます。どちらにしても細胞にダメージを与えてしまう結果となるのです。話を戻しますが、この照明が発生させる紫外線の問題を解消してくれるのがLEDライトです。
LEDとはLight Emitting Diodeの略で、発光ダイオードと呼ばれており、二酸化炭素の排出量も少なく水銀も使っていないため環境にも優しいのです。そして紫外線を含まないために紫外線が卵子に与えるダメージを抑制することができます。このように少しでも卵子にかかるストレスの排除に努めております。
培養室に対するイメージのお話
最後に培養室に対するイメージのお話です。
培養室はブラックボックスであり、培養の現場は不透明な部分が多かったかと思います。
空調や照明のことを述べさせてもらいましたが、一体どんな部屋で培養が行われているのか想像が付かないとの声もあるかと思います。
写真は、受付から見えるマジックミラー越しの培養室です。
患者さんにより近くで培養室を感じて頂けるよう、当院の培養室はマジックミラーにより培養室の様子が外から見ることができる透明性を実現しております。
当院にご来院された際には中の様子を是非とも覗いてみて下さい。
閉鎖的なイメージが少しクリアになってくるのではないでしょうか。