【設備技術紹介】ヒトリコンビナントヒアルロニダーゼについて

今回は顕微授精(ICSI)を行う際に使用する培養液についてお話します。

顕微授精は採卵した卵子に精子を注入する受精方法ですが、卵子は採卵した時点では卵丘細胞という細胞が卵子の周りについています。

  

  

ICSIを行う際はヒアルロニダーゼという酵素により卵丘細胞を取り除くことで卵子の成熟確認や、精子の注入作業を行うことが出来ます。

そこで使用されるのがヒアルロニダーゼ含有培養液です。

当院では、今年からヒトリコンビナントヒアルロニダーゼを使用しております。   

  

ヒアルロニダーゼは、ウシやヒツジの動物由来とヒトリコンビナントのヒト由来があります。

動物由来のものはウシやヒツジの精巣から抽出しています。そのため、ヒアルロニダーゼ以外の必要のないタンパク質が入っており、卵子に影響を及ぼす可能性があります。その分、ヒト由来はヒアルロニダーゼのみの純度の高いものとなるため、卵子への障害性が少ないといわれています。

  

ではヒト由来、ヒトリコンビナントとはどのようなものなのでしょうか。

  

Recombinantの英訳は組み換えという意味で、この場合は遺伝子組み換え製剤を指します。

遺伝子組み換えというと、遺伝子組み換え食品を思い浮かぶと思います。

医療の現場では、意外と組み換え製剤が活躍しています。

例えば、糖尿病患者に使用するインスリンや、卵胞を育てるために使う卵胞刺激ホルモンなども同じ遺伝子組み換え製剤です。

当院でも、遺伝子組み換え製剤であるゴナールエフという卵胞刺激ホルモンを使用しております。

  

遺伝子組み換え製剤の製造工程の大まかな流れは、次の様になっております。

  • 作らせたい成分(インスリン等)の作り方が載っている遺伝子を、宿主となる大腸菌等の細胞に組み込み、目的の成分を分泌する細胞をつくる。
  • 宿主となった細胞を培養、増殖させ目的の成分を分泌させる。
  • 目的の成分を精製する。

ヒトリコンビナントヒアルロニダーゼは、ヒトのヒアルロニダーゼを作る遺伝子を宿主となる細胞に組み込み、増殖させ、ヒトヒアルロニダーゼを分泌、成分の精製をしているということになります。

目的の成分を分泌する宿主となった細胞は一部保存・ロット管理されるため、分泌物の品質は安定しています。

ヒトリコンビナントヒアルロニダーゼは先ほどお話したように、動物から抽出するより不必要な物質が紛れ込まない、そして品質が安定しているところが利点です。

  

卵子・胚がダメージを受けないよう、より工夫していきたいと思っております。

ご質問等ありましたら、お気軽にお問い合わせください。