【設備技術紹介】クリーンベンチのお話

 今回はクリーンベンチについてお話します。下の写真は当院のクリーンベンチになります。

 クリーンベンチとは、清潔な環境で作業を行うことの出来る作業台のことを言います。外部からの汚染を防ぎ、無菌的な環境を作り上げるのが目的ですが、ではどのようにしてその環境を作っているのでしょうか。

 

 それは空気の循環です。

まず下写真の開口部から外気が導入されます。導入された外気は、天井でHEPAフィルターにより濾過され、天井からワークエリアへと循環されます。

 以前にもお話しましたが、HEPAフィルターとは、『定格風量で粒形が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能をもつフィルター』と規定されています。これにより空気が濾過され、清浄度を保つことができるのです。

 空気中にはゴミ、埃や粒子、そして細菌も浮遊しています。特に細菌の混入は、培養液の養分を吸収して汚染が広がり、胚にまで深刻なダメージを与えてしまいます。そうしたものの混入を防ぎ、清潔な環境で操作を行えるのがクリーンベンチの特徴です。

 クリーンベンチ内部の素材は総ステンレス製となっており、他の金属に比べてステンレスは錆びにくいという特徴があります。もし錆びてしまうと空気の循環に合わせて錆も舞い上がり、汚染の原因にもなります。そうした観点からも清浄度を保っているのです。下の写真からステンレス製であることが分かるかと思います。

 

 顕微鏡もクリーンベンチと一体型となっていることでワークエリアを広く活用することができます。これによりパフォーマンスの向上や事故の防止にも繋がります。

 卵子は温度による影響を受けやすく、温度が下がってしまうと発育自体にダメージを与えかねません。ワークエリアでは、加温により常に保温された状態となっており、温度による卵子への影響を軽減しています。

  

 配偶子を扱う上で、異物の混入は厳禁です。培養室に入る前には、手洗いはもちろんのこと、アルコールで手指を消毒してから操作に入ることを徹底し、クリーンベンチ内のワークエリアも使用前にはアルコールで消毒を行っております。このような日々のルーチンワークとクリーンベンチ、そして何より培養室自体にもヘパフィルターを搭載しているため、ダブルクリーンな環境での作業が実現しています。来院された際には、ガラス越しに培養室を覗いてみて下さい。