【基礎内容】精液検査について

精液検査とは、1回の射精で得られる精液の量と、精液内の精子の状態を調べる検査です。

方法

自宅で採取して持って来る「検体持参の方法」と、「クリニック内で採取する方法」とが選べます。

  1. 病院で検査予約を入れ、精子採取用のプラスチック容器を受け取ります。
  2. 検査予約日の当日に射精を行い、病院まで持っていく/病院内の採精室で射精します。
    (病院内で採精した場合、液化時間があるため30分後に検査を開始いたします)
  3. 検査の結果を待ちます。(後日でも可能)。

基準値は以下の表の通りです↓

注意事項

  • 精子はマスターベーションで全量採取
  • 精子を採取したら採取時間と禁欲日数をメモして3~4時間以内に病院まで運ぶ
  • 精子を持ち運ぶ際には容器をアルミホイルで包み、人肌程度に保つ
  • 禁欲日数は3~4とる

当院では、精子量・精子濃度・運動精子率(動いている精子の割合)・正常形態精子率(正常な形の精子の割合)を測っています。

精液所見の下限基準値 男性不妊の分類
精液量 1.5mL  
pH  ≧7.2  
総精子数 射精した精液中に 3900 万 乏精子症:総精子数(または精子濃度)が下限基準値未満
精子濃度 精液 1mL 中に精子が 1500 万 無精子症:精液中に精子が存在しない
運動精子率が 40% (動いている精子の割合)  
正常形態精子率  4% (正常な形の精子の割合) 奇形精子症:正常形態精子率が 下限基準値未満
前進運動率 前進運動精子が 32% 精子無力症:前進運動精子が 下限基準値未満

*WHO(2010)の精液検査基準値

WHOが定める精液検査の基準値は、妊娠を希望してから1年以内に子供ができた男性の精液所見を状態が良いほうから並べていった時、下から5番目の値を基準としています。

したがって、基準値を下回っても妊娠できないというわけではありません。

精子の奇形について

下の↓絵は、正常な形の精子と異常な形の精子の例を表しています。一番左が形のキレイな精子で、その他は奇形と呼ばれる形が異常な精子です。

精子の奇形は特別なことではなく、子供を持つ男性も含めてすべての男性の精子の中に奇形があり、奇形率が0%ということはありえません。しかし、正常な精子の割合が15%以下であると自然妊娠が難しいといわれています。それは、頭部の形に異常がある精子は、DNA情報が正常ではなく、尾部に奇形があると卵管采までたどり着くのが難しくなるためです。

検査結果からは、「精液量」「精子濃度」「運動率」「正常率」などが分かります。

そして、結果から、医師が総合的に判断して、「これなら自然妊娠が望めます!」「この数値だと自然妊娠は難しいです」「体外受精を考えてもいいかもしれません」など、精子の状態によって治療方針を決めたり、一気にステップアップしたりの判断材料になります。

 

「不妊」というと女性だけの問題と思われがちですが、決してそうではありません。WHOの調査によると、不妊の原因の48%は男性側にもあると言われています。まずは、夫婦ともに検査を受けることをオススメします。

また、精液検査は、日頃の生活習慣・食習慣・ストレス ・検査日のコンディションによって数値が大きく変わります。さらに、精子を作る機能も加齢の影響を受けることや喫煙が悪影響を及ぼすともいわれています。

したがって精液の状態は、生活状況によっても日々変わるといわれており、1回目の検査結果と2回目の検査結果で、数値が異なることはよくあります。WHOのガイドラインでも1回の射精精液では評価が十分とはいえないとも記載があります。基準値に満たなかった場合は医師とのご相談の上、再検査をされてもよいかもしれません。