【基礎内容】卵の凍結・融解について

当院での移植は凍結融解胚移植を行っているため凍結融解を行っています。精子・未受精卵子・受精卵(胚)などの細胞を長期保存するためには液体窒素の温度(-196℃)に凍結することが必要です。しかし、細胞の質などによって融解後に必ず安定して高い生存率が維持される訳ではありません。

今回はどのように凍結・融解を行っているかをご紹介します。

凍結保存の歴史

1972年にはプログラムフリーザーを用いる「緩慢凍結法」による胚の凍結が行われていましたが、成績が不良で未受精卵子の凍結保存は困難でした。

1985年に「ガラス化保存法」が開発され未受精卵子凍結も行えるようになりました。

当院で行っている「超急速ガラス化保存法」は1999年に開発され、ガラス化保存法よりも冷却速度が速く高い生存性が得られる方法です。

ガラス化保存法とは

液体から超急速に温度を下げると結晶を作らずガラス状の固体となり、この状態のことをガラス化といいます。

ガラス化保存法とは、胚や卵子の細胞内液を凍結保護剤に置き換え、すぐに液体窒素内で凍らせることで細胞内に水晶を作らずにガラス化温度まで細胞内温度を下げる方法です。

凍結による胚のダメージは、主に細胞内外の氷晶形成によるものと凍結保護剤による細胞毒性が挙げられます。

 手技についてはyou tubeに動画を公開しています(↓からリンクします)。

【貴重映像】卵子凍結って実際どうやるん?クリニックで見学してきた【後編】

融解

液体窒素から取り出した融解液で急速に融解し、凍結した時と逆の順に高濃度から低濃度の液に入れ、細胞内に水を戻します。

凍結された胚や卵子を融解するときに気を付けることは再結晶です。液体窒素の-196℃から加温した場合、-20~-80℃の温度域で再結晶が発生しやすく胚にダメージが起きやすいです。しかし、37℃に加温した融解液で超急速に加温することにより、水晶形成が防がれ卵子・胚のダメージも少なくなります。

生存率

ガラス化保存された胚盤胞の融解後の生存率は、おおよそ99%です。また、卵子の融解後の生存率はおよそ90%以上です。

さいごに

凍結融解した胚を移植するほうが新鮮胚を移植するよりもOHSSのリスク軽減や着床率が良いといわれています。凍結融解による卵へのダメージは多少ありますが、母体の環境を整えることが着床率にも繋がると考えています。

私たち培養士もよりダメージの少ない培養液や手技を目指しています。