「-196℃のゆりかご」について

今回は当院の菊地院長が医療監修をおこないました、藤ノ木優先生執筆の「-196℃のゆりかご」についてお話したいと思います。

あらすじは小学館のホームページより転載します↓↓

母はなぜ、義母だと嘘をついたのか

明日見つむぎはごく幼い頃に父と母を亡くし、母方の親戚である奈緒に引き取られた。奈緒は心に不調を抱えながらも「義母」としてつむぎを懸命に育てる一方、心の距離を取ることにはこだわり、「母」と呼ばれることをかたくなに拒んでいた。

そんなある日、病院から奈緒が倒れたと連絡が入る。持病の子宮腺筋症が悪化し、大量に出血したのだという。急ぎ病院に駆けつけるつむぎだったが、そこで医師から奈緒の病状だけでなく、奈緒がつむぎの実の母親であることも告げられる。

信じがたい話に愕然とするが、医師が持つカルテには、たしかにこの病院で奈緒がつむぎを出産したことが書かれていて――。

母はなぜ、義母だと嘘をついたのか。18年間隠された出生の謎を追う、現役医師作家が描く圧巻の家族小説。

1年以上前の話になりますが、菊地院長が藤ノ木先生より医療監修をお受けしたご縁で、院長と一緒に藤ノ木先生とZOOMでお話する機会がありました。

その時藤ノ木先生より

「今自分のやっている仕事(胚培養士)が、生まれてきた子どもの将来のためにならない(生まれてきた子どもを幸せにしない)としたらどうするか?」

といったご質問をいただきました。(正確な言葉は覚えていないですがこういった趣旨のご質問だったかと思います。)私はあまり上手く答える事はできませんでしたが、菊地院長と藤ノ木先生が「たとえ将来生まれた子どもに不幸が訪れるとしても、それは今目の前にいる患者さんに医療を提供しない理由にはならないと思うよ。」と仰っていて非常に安心と納得をしたのを覚えています。

私が胚培養士になってから「体外受精で産まれた子どもたちは自分が体外受精で生まれたことについてどう思うのだろうか?」とずっと疑問に思っていました。

「-196℃のゆりかご」には私たちと同じ胚培養士も登場し、我々が日々行っている生殖補助医療(体外受精)によって生まれてきた子どもも登場します。作中ではそれらについても触れられており、読んでいるときにドキッとしたり心に刺さったりする場面が数多くありました。改めて私たちが日々接している受精卵の先に、人の命、家族や人生がつながるものであると再認識できるお話だったと思います。

将来胚培養士を目指している学生さんにもおすすめです!ぜひ読んでみて下さい。