凍結卵子を使うとき~そのステップとは?
近年卵子凍結についてのお話をよく目にするようになってきました。当院でも卵子凍結を実施しており2割の方がその後卵子融解をおこなっています。
第69回日本生殖医学会学術講演会にて当院の胚培養士が卵子融解についての発表を行っています。
https://medicalpark-minatomirai.com/cms/wp-content/uploads/2025/12/卵子融解.pdf
では、実際凍結した卵子を融解して妊娠を目指したい!と思ったときどうすればいいのか?
今回は実際に卵子凍結→融解→移植までの一連の流れについて説明していきたいと思います。
1.卵子凍結
簡潔にまとめると卵子凍結は次のようなステップで行います。
① 当院へ初診の予約を取っていただき来院後、術前検査を実施していきます。(採血など)
② 月経開始3日以内に当院へ受診していただき採血を実施後、排卵誘発を開始していきます。
③ 卵胞が育ったら採卵手術を実施していきます。
④ 採取された卵子を凍結していきます。
⑤ 後日凍結結果を聞きに来院していただきます。
実際の凍結手技については過去のブログにも掲載しています。
2. 凍結した卵子を融解したいときは?
卵子を融解→授精→受精卵を培養して凍結保存となります。
卵子を融解することを除けば通常の体外受精のステップとほぼ同一です。
患者様の行うステップとしては
1.婦人科診察で予約を取っていただきパートナーと共に当院へ来院
医師と診察し卵子融解についての説明があります。その後感染症採血と精液検査のご案内があります。
2.培養士外来
培養士外来の予約を取っていただき培養士から説明を受けオプションを決めていきます。お話する内容は、次のようになります。
融解する日程と予約
患者様の融解希望日時と当院で融解可能日時をすり合わせ決めていきます。
当日は午前中に精子検体を提出していただきますので、男性が必ず午前中に来院できる日時をあらかじめ何日か候補を挙げていおいていただけるとスムースです。当院での院内採精をご希望でしたら、採精室のご予約もここでお取りできます。
当日精子検体をご提出いただきましたら、すぐにお帰りいただくことも可能ですが、
「精液所見が心配だから確認したい」・「調子が悪かったら卵子融解延期しようか・・」
など医師と相談して卵子融解の最終決定を行いたい方は診察予約もお取りします。
融解希望個数
何個の卵子を融解するか決めます。事前の診察で医師からもオススメ個数は提案されると思いますので、ご希望の個数を伝えて下さい。
授精方法や精子調整方法などのオプションとかかる費用
融解した日に顕微授精を行っていくためPIEZO-ICSI,カルシウムイオノフォア, PICSI,Zymotスパームセパレーターを希望するか確認させていただきます。
それに伴いかかる費用についてもご説明いたします。
基本は胚盤胞凍結を目指しますが、なるべく移植まで行いたいなど初期胚凍結をご希望でしたらご相談ください。
※当院では卵子融解の場合体外受精は実施しておりません。強いご希望がある際は医師とご相談ください。
オプションについては過去のブログをご参照ください。
同意書の確認
卵子凍結は女性のみの同意書で実施できますが、卵子融解と受精・胚移植などの生殖補助医療(ART)については当然パートナーの同意が必要です。
当院で治療を行うにあたり必要な同意書が揃っているか一緒に確認していきます。
※↑それぞれクリックすると説明が出てきます。
ほかご質問・ご心配なことなどありましたらお気軽にお話しください。
3.決定した融解日当日にご来院
精子を採取してご提出いただきます。ご自宅で採精し持参しても当院で採取でもどちらでも構いません。
精子を調整しつつ同時進行で卵子を融解します。卵子の生存を確認した後、顕微授精を実施します。翌日受精確認を行い培養します。良好胚であれば凍結保存を行います。
4.結果報告
1週間後から培養結果をご報告できますので、ご都合のよい時にご来院ください。
3.凍結した受精卵の移植
卵子融解をし良好胚を凍結できたら、いよいよ移植です。
※培養報告のときに移植時期のご希望をお伝えいただくと、その後の来院予定が立てやすいかと思います。
移植周期の患者様の来院予定は...
①移植希望月に合わせ月経開始3日目に受診していただきます。採血とエコー検査を実施しお薬のお渡しを行います。
②移植日を決めていきます。1週間後にもう一度受診して採血とエコー検査を実施し子宮内膜とホルモン値を見ていきます。この時の結果によりもう一度受診していただく場合があります。
③移植当日に凍結した胚を融解し移植していきます。
胚移植について詳しい説明は過去のブログもご参照ください。
※現在は使用しているお薬が変更になった為、移植後の安静時間は無くなりました。変更後も妊娠率に影響は出ておりませんのでご安心ください。
④約1週間後に妊娠判定を行いに来院していただきます。
基本この様な流れで実施していきます。場合によっては検査等が増えていくこともありますので、この流れで進まない場合もありますのでその際はご了承ください。
まとめ
卵子凍結を希望される患者様は年々増えているように感じます。自身の人生設計における選択肢を広げる手段でもありますが、残念ながら凍結した卵子が必ずしも妊娠に至るものとは限りません。どうしても凍結した年齢・移植する年齢によって妊娠率は影響を受けやすくなってきます。凍結した卵子があるから必ず妊娠できるではなく、自身の選択肢の1つとして考えていただければと思います。
また、当院では卵子融解とそれを用いた新鮮胚移植を行うことは実施していません。
そのため妊娠したい時期等も加味し凍結した卵子をいつ使用するか前もって考えていただけると幸いです。

