社会の変化のスピード
現在、我々メディカルパークグループ(医療法人桐杏会)のテレビCMがフジテレビで放映されています。ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。少し前にスキャンダルが報じられたこともありましたが、それでもフジテレビは依然として日本を代表するマスメディアのひとつです。
かつてフジテレビは新宿・河田町にあり、東京女子医大のすぐ近くでした。学生時代、あの界隈を訪れた記憶があります。確か社内食堂は一般にも開放されていて、何かを食べたような曖昧な記憶が残っています。
そのフジテレビが1997年、お台場へと移転してから、もう30年近くが経とうとしています。移転直前に放送されたドラマの最終回では、河田町の商店街の方々がモブキャラ的に登場していました。お祭りのような雰囲気が、ドラマの結婚式シーンに重ねられていたのです。当時のフジテレビは勢いがあり、田舎から出てきた私にとっては、まるで都会の象徴のような存在に映っていました。
しかし近年、フジテレビはかつての勢いを失いつつあるようにも感じます。これはフジテレビに限った話ではなく、SNSや動画サイトの台頭、そして価値観の大きな変化が、メディア全体の構造を揺るがしているのかもしれません。時代の最先端を走っていたはずのマスメディアが、その変化に追いつけなかったことは、何か象徴的ですらあります。
「大きな船は曲がれない――沈みゆく船に、どこまでしがみつくのか?」
昔、師匠からそんな問いを投げかけられたことがあります。大きな組織ほど、時代の変化に取り残されやすい。大学病院の在り方について、そう表現されていました。
とはいえ、大学病院もフジテレビも、今なお存続しています。社会の変化は急激には起こりませんが、確実に、そして着実に進んでいる。だからこそ、時間がかかることを承知の上で、その波に乗る覚悟が必要なのだと思います。
今の時代は、変革の真っ只中です。一人の人生では気づきにくいような変化も、世代を超えて見れば確かに起こっている。私が浦安市で卵子凍結プロジェクトを始めてから、早くも10年が経ちました。来年度からは、こども家庭庁による卵子凍結助成が始まるという報道もありました。
ひとりの人生では成し遂げられない変革も、何世代にもわたって取り組めば、確実に社会を変えていける。だからこそ、「今だけ、金だけ、自分だけ」と言われる時代にあっても、自分だけに固執せず、もっと広い視座を持つことが大切なのではないでしょうか。
「何者かになりたい」――そんな欲求を持つ人は多いと聞きます。ですが、どれほど偉業を成し遂げても、歴史に名を残すのはほんの一握り。私たち一般人にできることは、変革の1ページの1行に、ほんのりとでも名を刻むこと。それだけでも、十分に価値あることだと思うのです。