【設備施設紹介】妊孕性温存(がん生殖)のお話
今回は、がん患者における妊孕性温存についてお話します。
国立がん研究センターによると、一生の内にがんと診断される確率は2017年のデータによると男性は65.5%、女性は50.2%です。
2人に1人が、がんになるという確率ですが男女ともに50代から80代で増加するそうです。しかし、その中で多くはありませんが0歳から妊娠可能年齢において、がんになる可能性もあります。
もし、がんと診断されれば抗がん剤・放射線治療などのがん治療を行うことになるかもしれません。
そうなると、抗がん剤や放射線の影響で妊娠するための臓器である子宮、卵巣、精巣がダメージを受けてしまい、妊孕性(妊娠しやすさ)が低下したり、失われる可能性があります。
また、がん治療期間が長い期間となると加齢による妊孕性の低下も起こりえます。
これにより希望する・しないにかかわらず、子供を授かるという将来の可能性ががん治療によって狭まります。
がん治療を最優先としながら、妊孕性を温存させ子供を授かる可能性を広げるための方法があります。
それは、治療前の妊孕性の温存 「妊孕性温存療法」という方法です。
妊孕性温存療法は、がん治療を行う前に卵子や精子、胚(卵子と精子を受精させた受精卵のこと)、卵巣を凍結保存し将来における妊娠出産の可能性を残す方法です。
患者様の年齢(第二次性徴を迎えているか)・時間的余裕(がんの進行度、がんの種類)・婚姻状況 (パートナーがいる場合、胚を凍結可能)など状況によって卵子・精子、胚、卵巣のどれを凍結するか異なります。下のフローチャートを参照にしてください。
フローチャートの※印の卵巣凍結保存の治療は、有効性(実際に凍結した卵巣が妊娠に繋がるのか)と安全性(がんが転移しているかもしれない卵巣をもとに戻して安全か)が確立されていないため研究段階の方法です。
卵子・精子、胚については実際に行われている方法であり、精子は精液採取をしてもらい精子凍結保存を行います。
卵子は普通の生理周期ですと1個しか排卵しないので、ホルモン剤を投与して卵巣刺激を行い複数の卵子を回収し凍結保存します。
がん治療が終わった後は、精子・卵子の凍結保存を行っている場合、妊娠を希望されたときに精子・卵子を融解し、パートナーの配偶子と顕微授精(精子を卵子に注入して受精させる方法)し、胚を移植します。
胚を凍結保存している場合は胚を融解し移植します。
また、卵子凍結と胚凍結の妊娠率に違いがあり胚の状態で凍結したほうが、妊娠率が高いといわれています。
下の表は卵子・胚・卵巣の凍結保存の違いのまとめです。
費用等は施設によって異なる場合があります。
これで妊孕性温存についての話は終わりです。
当院では胚凍結以外にも卵子凍結も行っております。
院長は妊孕性温存におけるがん生殖の専門的知識をお持ちの方です。また、今年度より医学的適応による妊孕性温存に関する日本産科婦人科学会からの認定施設となりました。
問い合わせ、ご質問等ございましたら診察にてお尋ねください。