【基礎内容】月経と基礎体温
今回は月経と基礎体温についてお話します。
月経
月経とは、「約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的な出血」です。増殖期に肥厚した子宮内膜が、排卵後の黄体から放出されるプロゲステロン(黄体ホルモン)の作用により脱落膜化変化し、分泌期となり、プロゲステロンの低下を機に脱落膜化した子宮内膜が剥離、月経となります。ヒトの子宮内膜は生殖年齢期間において約400回の増殖、分化、剥脱といった変化を繰り返す、非常に再生能力の高い組織です。
子宮内膜の再生と剥離は、視床下部~下垂体~卵巣で産生されるホルモンによりコントロールされています。
生殖年齢女性で月経周期の正常範囲は25〜38日(平均28日)です。そのうち、子宮内膜の増殖期の平均が14日、分泌期が14日です。
月経周期が25日以下を頻発月経、39日以上を希発月経といいます。また、月経持続日数が2日以下を過短月経、8日以上を過長月経といいます。
増殖期の日数は、卵胞発育やエストロゲン産生量によって大きく変化することがあります。希発月経の場合、卵胞発育不全や排卵障害などが疑われます。一方、頻発月経は前周期の分泌期後期頃から卵胞発育を認め、早期に排卵する早期排卵や早期黄体化、黄体機能不全が疑われます。
無月経
月経が来ない場合、プロゲステロン単独負荷(ゲスターゲンテスト)により消退出血を認める第1度無月経と、消退出血を認めずエストロゲンと併用し出血を認める第2度無月経があります。
プロゲステロン単独負荷(ゲスターゲンテスト)とは、無月経の重症度を調べる検査です。黄体ホルモン類似の作用をもつ薬剤(ゲスターゲン)を投与して、卵胞からエストロゲンが分泌されているかどうかを間接的に推定します。ゲスターゲン投与後、薬効の消失とともに月経と同様の出血(消退出血)が認められれば、エストロゲンの分泌が保たれており、子宮内膜の増殖があると推定されます。
第1度無月経は、卵巣には発育途中の卵胞を認め、血中エストロゲン値を一定量認めるため、子宮内膜は増殖していますが排卵せずプロゲステロンの分泌がない、多嚢胞性卵巣症候群のような排卵障害が考えられます。排卵障害が中枢性でも軽度であり、エストロゲンは分泌しているため、骨塩量の低下などのエストロゲン低下に伴う症状を認めることは少ないです。無月経だけでなく、子宮内膜の肥厚に伴う破綻出血により不正性出血を繰り返すこともあります。
第2度無月経は中枢性にゴナドトロピン分泌の低下(低ゴナドトロピン性性腺機能低下)もしくは卵巣機能が低下し、ゴナドトロピンの反応性が低下した早発卵巣不全(POI)や年齢に伴う閉経(高ゴナドトロピン性性腺機能低下)が主な原因です。
基礎体温
基礎体温とは、外気温に影響を受けにくい、朝目覚めたときの起床前の舌下で測定した体温のことで、1日のうち最も低いです。0.01℃刻みの婦人体温計で、毎日同じ時刻に計測するのが望ましいですが、起床前であれば必ずしも同一時刻でなくても大丈夫です。
排卵後の黄体から分泌されるプロゲステロンが視床下部の体温調節中枢に作用して、体温が上昇します。体温上昇の変化とプロゲステロン分泌量に相関はなく、プロゲステロン値が2.5ng/ml以上で体温が上昇します。
高温相は低温相より0.3℃以上の体温の上昇が7日以上継続すること、と定義されています。
高温相が10日以下の場合には、黄体機能不全と診断されます。また、基礎体温表には、36.7℃に境界線が描かれていますが、体温には個人差があり、高温相を36.7℃以上とするのは誤りです。低温相より0.3℃以上高ければ、高温相としてよいと考えられています。
排卵日の基礎体温のパラメーターとして用いられるのは、体温陥落日、低温相最終日、高温相初日など諸説ありますが、一定の見解はないので、基礎体温表のみでの排卵日特定は困難です。
当院では月経困難症や生理不順の治療もできます。現在妊娠を望まない方には低用量ピルでの治療が一般的です。低用量ピルを使用することは避妊だけでなく、PMSや生理痛の緩和、内膜症予防にも効果的です。挙児希望がある方にはクエン酸クロミフェンによる卵巣刺激を行い、排卵を誘発させます。
またタイミング指導も行っております。ご質問等ございましたらお気軽にお問い合わせください。