タイミング療法
タイミング療法(タイミング指導)とは、妊娠しやすい時期を医学的に確認、性交のタイミングをご教示する方法です。月経周期が順調な方であれば、月に1回排卵が起こりますので、そのタイミングに合わせて性交渉を持ては妊娠の可能性が高くなります。ただ、海外のガイドラインなどでは不妊治療としては捉えられていないようです。妊娠を試みてうまくいかないからこそクリニックなどを受診しているわけですから、それなりのタイミングを持った上で来院されているカップルに対して、「それではタイミング療法を」という治療方針は確かに論理的ではないでしょう。
しかしながら、我が国においては、妊娠を望むご夫婦でさえ、性交渉の頻度は世界的にも低いと言われているため、どのタイミングで性交渉を持つか、は大変重要になるのです。セックス回数の世界平均は年間100回以上なのですが、我が国では40回ほどと言われており、そもそも回数が少ないことも不妊原因のひとつになっているのかもしれません。
さて、妊娠しやすいタイミングですが、基本的に精子の寿命(5日前後)の方が卵子の寿命(24時間)より長いため、排卵前からタイミングを合わせてセックスしておくのが良いと言われております。性交渉の頻度高い方が妊娠率を上昇させるというエビデンスもあり、排卵日にあまり拘らずになるべく多くの回数を持つ方が良いと考えられるのです。よく言われるのですが、頻回のセックスは精子の質や量を悪くするため“ためておいた方がよい”ということはなく、むしろ禁欲期間(射精の無い期間)が長すぎるとかえって造精機能が低下することも知られています。
よって、妊娠のためには排卵前から数回のタイミングを持てることが理想的でしょう。排卵のタイミングの予想は外来で採血や超音波検査で行うことが出来ますが、月経周期が順調で基礎体温表などで排卵が確認できている方の場合には、予測される排卵日の前からタイミングを持っておくだけでも十分な効果があるわけです。不妊の原因となる精子の異常や子宮・卵巣・卵管の異常が無い場合、この方法で半年以内に妊娠に至ると言われており、セックスの回数が十分にあるカップルが受診された際に改めてタイミング療法を行う意義は薄れてしまうわけです。
当院では、初診時に基礎体温表などを参考にしつつ、適切なタイミングで性交渉ができていたかどうかを確認させていただきます。そもそもタイミングがずれていたり、うまくできていなかったりした場合にはタイミング療法も選択肢と考えますが、問題ない場合にはまずは検査をお奨めさせていただきます。その中でも男性側の精液検査はとても重要な項目となります。詳細につきましては、外来でご相談させていただきたいと思います。