不妊治療の保険適用③ 適応外使用と病院持ち出し
わが国が世界に誇る国民皆保険の問題について、前々回、前回と述べてまいりました。混合診療が禁止されている以上、一連の治療の中で保険診療と自費診療を混合することはできないことになっておりますが、それが問題となることがありますので、ひとつ例を挙げたいと思います。また筋腫の手術の話になりますが、例えば筋腫核出術の際に頻用するバソプレシンという薬剤があります。基本的には抗利尿ホルモンとして、尿崩症の治療など…
【お知らせ】妊孕性温存における施設認定
兼ねてより準備をしておりましたが、先日を以てメディカルパーク横浜は、日本産科婦人科学会より「医学的適応による未受精卵の採取・凍結・保存施設」としての認定施設となりました事を報告致します。 ここで言う医学的適応とは、化学療法や放射線治療など、悪性腫瘍(がん)の治療を行う前の対応の事を示します。がん生殖とも表現されます。 メディカルパーク横浜は、神奈川県内のクリニックとしては唯一の認定施設となっ…
不妊治療の保険適用② 混合診療について
前回、皆保険制度の問題点についてお話させていただきました。今回はその続きとなります。前回は、施設や医師により、医療レベルが一定でないことを問題としてあげさせて頂きましたが、今回は、その逆に医療費の計算のもととなる保険点数が、病名と手技により一定であることを問題として挙げさせていただきたいと思います。 わかりやすいものとして、子宮筋腫核出術を例にお話したいと思いますが、妊娠を考えている患者さんにとっ…
不妊治療の保険適用の話題① 国民皆保険の問題
先日、「不妊・不育治療の環境改善を目指す当事者の会」の方々と遠隔でのミーティングをさせていただく機会を頂きました。私は一介のクリニック院長ではありますが、当事者の方々がどのようなことを感じられているのか、何を問題だと考えられているのか、今後どのようなことが必要となってくるのか、を共に考えることができたことは大変ありがたいことだったと思います。様々意見を交わしたのですが、ちょうど自民党の総裁選で不妊…
【設備技術紹介】アシステッドハッチングのお話
今回は凍結した受精卵を移植する前に行っているアシステッド・ハッチング(以下:AHA)についてお話します。 卵子の周りには透明帯と呼ばれるタンパク質の層があり、栄養の供給や受精時の精子との反応など様々な役割を担っています。受精の成立後、受精卵は成長と共に胚盤胞という形に変化していき、最終的には透明帯を破いて中身がハッチング(孵化)し、子宮内膜に着床します。すると妊娠が成立するのです。 ですがこの透明…
【お知らせ】病院選びについて
夏期休暇をいただいておりましたが、8月28日(金)より診療開始致します。通常の休診日同様、お預かりしていた卵・精子については培養士スタッフが出勤して対応しておりますのでご安心ください。 私も数日夏休みをいただいておりましたが、ついついスマホで情報収集をしてしまいます。良い意味でも悪い意味でも日常の一部になってしまっているので、これも考えなくてはなりません。 我々培養士と呼ばれる医療技…
【お知らせ】妊娠成績の更新
緊急事態宣言解除後、多くの方が移植周期に入り、それに比例して妊娠された方も増えて参りました。細かい成績が気になるという声もありましたので、現時点での移植による治療成績をお知らせいたします。現在判定待ちの方もおりますので数字は若干変動しますのでご了承下さい。 当院は、「適切な排卵誘発を使い、可能な限り少ない採卵回数での妊娠を目指す」「子宮内環境においては、ポリープ・筋腫などの着床障害因子や内…
【お知らせ】学会について
私たち胚培養士は各種関連学会(日本卵子学会・エンブリオロジスト学会・受精着床学会・生殖医学会etc...)などに参加し最新の情報収集を行っています。 通常は会場にてお話を聞いたり、報告をまとめたレポートを見たりするわけですが、コロナの影響によりその運営の在り方が変わって来ているようです。オフラインとオンラインを上手く組み合わせていく形が一般化するかもしれません。 そんな折ですが、今年の10月…
【基礎内容】加齢と妊娠について
月経周期ごとでの妊娠率をMFR(monthly fecundity rate)といいますが、不妊原因がなく、健康なカップルが避妊をしない場合、MFRは約20%です。例えばウサギは90%、マントヒヒは80%で、このことからヒトは他の哺乳類と比べてもMFRが低く、妊娠しづらいということはご存知でしょうか? 平均結婚年齢・平均出産年齢も上昇傾向となり、2011年に第一子の平均出産年齢が30歳を…