卵子凍結についての取材を受けて
私は浦安市のプロジェクトに携わったこともあり、最近、卵子凍結に関する取材の機会が増えております。先日も日経新聞からご依頼があり、取材に応じさせていただきました。記事はすでに公開されており、有料ではありますが、ご覧いただける方はぜひ読んでみてください。記者の方は、非常に丁寧かつ時間をかけた取材をされており、私も様々な角度からお話させていただきました。ブログでは、その内容を詳しくご紹介することは控え、簡潔に要点のみご紹介したいと思います。
卵子凍結が有用となるケースとは
以前より私は、卵子凍結は有益な選択肢となりうる方がいる一方で、必ずしも全員に必要なわけではないという旨を伝えてきました。妊娠の可能性は、個々人のライフプランと密接に関係しており、「計画的卵子凍結」という言葉が示す通り、将来に備えて年齢による妊孕性の低下に対処する技術として位置づけられています。
このため、卵子凍結の適切なタイミングや必要な数は、その方の年齢や将来の家族計画に深く関わってきます。採卵で得られる卵子数は、卵巣刺激法や個人の体質によって大きく異なり、あらかじめAMH値などから採卵の見通しを立てることが重要です。その上で、年齢と採卵数に基づいて将来的な出生率を予測し、必要な採卵回数や費用について十分に相談した上で意思決定すべきだと考えています。
現場で語られた課題と懸念
日経新聞の記事の中では、理想的な卵子数を確保するため、複数回の採卵を行った結果、想定以上の費用が掛かったという女性の体験が紹介されています。また、クリニック側が採卵数を意図的に抑え、複数回の採卵を促す可能性についても言及がありました(私自身はそのような不誠実な医療機関は存在しないと信じています)。
東京都の助成制度は年に1回までと定められており、2回目以降はすべて自己負担となる点も、現実的な負担として認識すべきです。
医療には常に不確定要素がつきまとい、希望する卵子数を計画通りに得ることができるとは限りません。さらに、東京都の助成が39歳までという制限があるため、駆け込みのような形で39歳直前に採卵を希望される方も多いようですが、この年齢では妊孕性がすでに低下しているため、多くの卵子が必要である上に、それでも若年での卵子凍結に比べて将来的な出生率は劣ってしまいます。
助成制度と意思決定の在り方
東京都が卵子凍結に対する助成制度を検討する際、私は都議会に呼ばれ、意見を述べさせていただく機会をいただきました。浦安プロジェクトでの経験を踏まえ、希望する女性に対してまず正しい知識を届ける説明会の実施が不可欠であることを強く訴えました。
卵子凍結を行うかどうかは、最終的には当事者自身がご自身のライフプランを踏まえ、熟考した上で選択するべきだと考えています。
私は卵子凍結の技術そのものを否定する立場ではありません。むしろ、加齢による妊孕性の変化が男女間で異なる現状を補う技術として、ジェンダーギャップ解消の一助になると捉えています。ゆえに、必要とされる方に助成制度が提供されることは社会的にも意義のあることだと感じています。
ただし、記事にもあるように、助成制度が医療機関の利益追求に利用されるような事例が仮にあるとすれば、それは看過できません。
人生が計画通りに進むとは限らないように、卵子凍結もまた、予測の範疇に収まりきるものではないのかもしれません。だからこそ、「本当に自分に必要な選択なのか」をじっくり考えた上で臨む姿勢が大切だと思います。