プレコンセプションケアについて

”プレコンセプションケア“、最近この言葉をよく耳にするようになりました。文字通り、前を表す”プレ“が妊娠を表す”コンセプション“にかかっており、将来の妊娠を考えて健康をケアする、という意味になります。妊娠・出産はその多くが女性の身体にご負担をかけることでもありますので、子ども家庭庁のHPでは、「女性やカップルを対象として、将来の妊娠のための健康教育を促す取組」とされております。しかしながら、パートナーのいない男性も対象とすべきと考えますし、妊娠可能な年齢の女性を取り巻く環境、ひいてはその周りの方々にもその知識が無ければケアは不可能でしょう。よって、私見ではありますが、プレコンセプションケアについての知識啓発は全ての方々を対象とすべきと考えております。

さて、セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(SRHR)はライツという以上、人権のひとつと考えるべきです。妊娠・出産する・しない、いつ産むか、何人産むか、を決めることができるのは大事な権利です。ただ、我が国においては、所謂「性教育」がまともには行われておらず、それ故性についての知識が不十分となってしまっていることはご存じのことと思います。妊孕性が年齢によって低下することや、妊娠するための方法としての体外受精を含む不妊治療などについての教育はほとんど行われていないため、いざというときに手遅れになってしまうこともあると思われます。

もしかすると、この“プレコンセプションケア”は性教育がなかなか進まないこの国の状況下で、言葉を替えて情報提供をしていこう、という考えも少しはあるのかもしれません。いずれにせよ、とても大事なことではありますので、我々末端の産婦人科医も、情報発信をしていく責務があると思われます。

当院としても、不妊治療として保険診療で始められるカップル以外を対象として、プレコンセプションケア外来を開始したいと思います。保険診療は婚姻、または事実婚でなければ適用されませんので、自費にはなってしまいますが、これから妊娠を考えている方向けにいくつかの検査を行うことといたしました。詳細につきましては、ご遠慮なく、お問い合わせいただければ幸いです。

いざ、妊娠しようとしたときに後悔することの無いよう、あらかじめある程度備えていくことは重要と考えます。よろしくお願いいたします。