「初めて」の力──女性総理誕生と医局の変化
日本初となる女性総理が誕生しました。SNSを眺めていると、期待と同時に批判的な声も少なくないようです。もちろん、政治的な評価は人それぞれですが、私個人としては、まず「女性初」という事実に大きな意味を感じています。これまで男性が独占してきた政治のトップに、女性が立ったということ。それは、社会の深層にある固定観念に一石を投じる出来事であり、未来への扉がひとつ開いた瞬間でもあります。
奇しくも同じ時期に、私の母校の産婦人科医局でも新しい主任教授が誕生しました。女性ではありませんが、非常にバランス感覚に優れた先生がトップに立たれたことを、心から嬉しく思っています。医局という閉鎖的な組織において、こうした「バランスの取れたリーダー」が誕生すること自体が、時代の変化を象徴しているように感じます。
社会は、急には変わりません。特に大きな組織ほど、変化には時間がかかります。だからこそ、「初めての女性総理」という出来事は、今すぐに何かが劇的に変わるというよりも、これからの10年、20年にわたってじわじわと社会の構造を変えていく起点になるのではないでしょうか。
母校の医局では、主任教授の就任記念講演で「ジェンダーギャップのない医局を創る」と宣言されました。これまで、異常な長時間労働に耐えられる男性医師だけが登用されてきたという過去への反省も込められていたように思います。医局至上主義はすでに崩れつつあり、若い医師たちは入局を選ばず、直接美容外科などへ進むケースも増えています。医療の世界もまた、静かに、しかし確実に変化しているのです。
私は願っています。母校の医局が、産婦人科医を志す若者にとって、ワークライフバランスを保ちながら、幅広く研修できる場となることを。性別に関係なく、誰もが安心して学び、成長できる環境が整えば、医療の質も、患者との関係性も、より豊かなものになるはずです。
「初めて」は、いつも不安と期待が入り混じります。しかし、その一歩がなければ、次の一歩は生まれません。女性総理の誕生も、医局の変化も、私たちが未来に向けて歩み出すための大切な一歩なのだと、静かに確信しています。

