楽曲の嗜好と年齢
少し前に発表された調査によると、「10代で聴いていた音楽は、その後の人生にわたって嗜好に影響を与える」「新しい音楽との出会いは24歳前後でピークを迎える」といった、音楽と年齢に関する興味深い傾向が示されていました。
私自身、この傾向にかなり当てはまっているようで、家族や友人からは「いつも同じ曲ばかり聴いているね」と言われることがあります。実際、小学生の頃からずっと聴き続けている曲があり、今回はそのことについて少し綴ってみたいと思います。
2025年5月、京都で「MUSIC AWARDS JAPAN 2025(MAJ2025)」が開催されました。これは国内最大規模の国際音楽賞であり、今年はYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)が象徴的アーティストとして選出され、彼らへの敬意を込めた歴史的なトリビュートコンサートも行われました。平日の開催だったため、残念ながら私は現地に足を運ぶことはできませんでしたが、YMOの代表曲「東風(Tong Poo)」こそが、私が半世紀近く聴き続けている大切な一曲なのです。先日、そのトリビュートコンサートの映像がYouTubeに公開されました。よろしければ、ぜひご覧になってみてください。
▶︎ MAJ2025 Tribute Concert – YMO「東風」
YMOは1978年にデビューしました。当時は冷戦の緊張が続く中、オカルトブームが広がり、ブラックミュージックが台頭していた時代でもありました。
「黒魔術と白魔術があるなら、黄色人種の“イエローマジック”があってもいいだろう」——そんな発想から、細野晴臣さん、高橋幸宏さん、坂本龍一さんの3人によって結成されたのがYMOです。このうち、細野さんを除くお二人はすでに鬼籍に入られ、時代の流れを感じずにはいられません。
当時は欧米へのコンプレックスが根強く、音楽においても「洋楽>邦楽」という風潮がありました。そんな中、YMOは最先端のシンセサイザーを駆使し、欧米に誤解された“東洋的”イメージを逆手に取る戦略で、“テクノロジーの東京”をモチーフにした作品を発信。海外でも高く評価される、稀有な存在となりました。
ただ、天才が3人集まると軋轢も生まれるようで、活動期間はわずか5年半。彼らは「解散」ではなく「散開」という言葉を使って、グループとしての活動を終えました。
私がYMOに出会ったのは、小学校高学年から中学生にかけての頃。そのときの衝撃があまりに強く、以来ずっと「東風」を聴き続けているのかもしれません。
冒頭の話に戻りますが、「10代に聴いていた音楽」は、私にとってまさにYMOであり、「東風」なのです。家族には「またその曲?」と呆れられながらも、今でも飽きることなく聴いています。
同じ曲でも、演奏バージョンが違えば新たな魅力があり、メンバーが揃うことが叶わなくなった今でも、トリビュートとして誰かがカバーしてくれることで、また新たな感動を覚えるのです。
皆さんにも、そんなふうに人生に寄り添ってくれる一曲はありますか?