プレコンセプションケアの炎上と男女差別

少し前、ニュースにもなっていたのですが、SNSでとある地方のプレコンセプションケアについての冊子が“炎上”しておりました。年齢によって妊娠・出産が難しくなることについて、イラストなどを用いてやや脅しに近いようなニュアンスで記載していたためです。35歳の卵子の見た目が高齢者のようなイラストだったり、そこにアプローチする精子が“熟女キラー”とされていたりと、かなり問題のある内容だったと私も感じました。

いくら科学的に正しいことであっても、その伝え方には配慮すべきだと思います。このような記事を見ると、女性ばかりが非難されているように感じるのは私だけでしょうか?その背景にはやはり男女差別があるように思うのです。

男女差別はあってはなりません。特に現代社会においては、多くの人がそう思っているに違いありません。ただ、残念ながら、日本国内では社会構造などに男女間のギャップがあることは否めません。

もちろん、生物学的、特に生殖における男女の役割の違いは歴然としています。子宮を持ち、子供を宿すことができるのは女性のみであり、男性には不可能です。不妊治療や妊娠・出産においては、女性に大きな負担がかかります。逆に考えれば、生殖において、男性は子供を宿すことができないという大きなハンディキャップがあるとも言えるでしょう。また、妊孕性は女性の方が男性よりも加齢により大きく影響されるのも事実であり、生殖能力は若い女性が最も高いのです。

極論ではありますが、これまでの人類の歴史は、子供を宿すことができない男性が、力で若い女性たちを抑えつけ、自分たちの子孫を残そうとしてきたということになるのではないでしょうか?今回の炎上は、現代版の「産めよ、増やせよ」として捉えられてしまったのでしょう。妊娠する・しない、いつ産むか・何人産むかを決める権利はその当事者にあります。頭ごなしに「産め」というのは人権侵害です。少子化対策を考えるなら、「産みたい」と思える社会にすることが重要なはずです。だからこそ、現代社会においては、妊娠・出産可能な若い女性を全力でサポートする必要があると思います。

プレコンセプションケアの一環として、妊孕性の知識啓発が最も必要なのは、若い女性ではなく、旧態依然とした考えから脱却できない比較的高齢男性中心の社会全体だと考えます。特に日本のように高齢化している社会では、民主主義として数の力で高齢者にねじ伏せられてしまいますので、それに逆行するような政策がとても重要だと思います。票田が気になるのは理解できますが、それでも政治家の方々には、高齢者ばかりに目を向けた政治を行うのではなく、選挙権のない子供やこれから生まれてくる未来の子供たちのための政治を行っていただきたいと切に願います。