日本が誇る、国民皆保険制度 その光と影~SNSで感じたこと
これまでも何度か保険診療については記載してきましたが、やはり国民皆保険制度は非常によくできたシステムであることは間違いなく、他国に比べても、かなり優れた制度であると思います。
私はこれまで、他国の医師とお話しする機会があり、その際にいつも医療制度について議論しておりました。フリーアクセスで一定額で高度な医療が受けられる我が国の制度は、患者さんにとってはかなり恵まれた制度のようです。
そして、高額医療制度を使えば、高額な抗がん剤なども使用することも可能となっており、医療にかける費用によって治療に大きな差がなくなっていることも特徴の一つです。
そのしわ寄せが医療従事者側にあることは否めませんが、そのことについてはこれまでも述べてきたので今回はあえて触れないことといたします。
さて、少し前にSNSなどで話題となったことですが、あるスポーツ選手のがん治療のため、保険診療外の治療を受けるためのクラウドファンディングが立ち上がったことに対し、多くの批判が集まったことがありました。
確かに、非常に厳しい状態のがん治療について、藁をもすがるつもりで少しでも効果のある治療を探したくなるお気持ちも察するべきでしょう。しかしながら、我が国ではかなり高度な医療までが皆保険制度でカバーされているため、現時点で標準治療とされているものが最善の治療のはずなのです。
さて、この件、ちょうど不妊治療の保険適応と同じ時期にあった話題でした。不妊治療の領域では、保険適応に反対の意見の方々も多いことも事実であり、上述の高額ながん治療について、「インチキ医療」とまで蔑む医療者もいたことを思うと、私にはかなり対照的に感じたのです。
不妊治療の保険適応はこの4月からです。
これまで自費診療で培ってきた治療方針を見直す機会となったと同時に、保険診療内でいかに治療効果を高めていくのか、査定を恐れて縮小医療にならないよう、必要があれば、症状詳記でしっかりと説明できるように治療を進めていくべきと考えております。レセプト審査と呼ぶのですが、審査を行う先生方も大変な作業となると思いますが、最初が肝心と気を引き締めて挑みたいと思います。よろしくお願いいたします。