AMHと不妊
AMH(アンチミュラー管ホルモン)という採血項目があります。数年前に脚光を浴びたことがあり、お聞きになったことがある方も多いかもしれません。当初、“不妊かどうかが採血でわかる”、と過大評価されてしまった経緯があるのですが、基本的に現在では卵巣内に残っている卵子の数(卵巣予備能)のひとつの指標と考えられています。
個人差も大きく、年齢とともに低下しますが、特に不妊分野においては、排卵誘発に対する反応を予測するために使用することが多いと思います。よって、高ければ高いほど良いというわけでもなく、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と言われる疾患においては異常高値を示し、排卵誘発に過剰に反応し、卵巣過剰刺激症候群のリスクが高くなります。逆に低値であれば、排卵誘発を行っても獲得できる卵子の数が少ないと予測できるのです。
当院では、体外受精をご希望される患者さんには初診時にAMHを測定し、その結果で排卵誘発法を検討させていただいております。獲得できた卵子は、その後の受精、胚発育、移植後の着床の様々なステップを乗り越えなければなりませんから、できるだけ多くの卵子があった方が妊娠への可能性を高くすることが出来ます故、その患者さんにベストな誘発法を行うことが良いと考えており、その指標としてAMHは有用と思います。
上述PCOSではAMHが高くなりますが、通常の誘発方法を行ってしまうと卵巣が腫大しすぎてしまい、腹腔内に腹水が溜まってしまうような卵巣過剰刺激症候群になるリスクが高くなります。アロマターゼ阻害剤を使用する誘発法を選択することが多くなりますが、そのためにもAMHは有用なのです。さらに、重症のPCOSでは内視鏡手術を用い、卵巣に多数の孔を開けることにより、治療する方法もあります。このような場合でも、内視鏡手術は有用なのです。
不妊治療中に手術が必要になることも少なくありません。そして、その場合には可能な限り、ご負担の少ない内視鏡手術が理想的です。当院はメディカルパーク湘南と連携し、内視鏡手術にも対応できるようになっており、安心して手術に臨むことが可能です。